トランプ氏の大統領就任関連ニュース一色となった昨日、ひょんなことからデジタル民主主義革命の可能性を秘めた「デジタル民主主義2030」という構想に目が止まった。開発者である庵野貴博氏が16日に記者会見を行った。同氏のHPに会見の全文が掲載されている。そもそも「デジタル民主主義2030」とは何か?以下HPからの引用。「行政・政治をアップデートするAIプロジェクト」、「実証実験の協力自治体・政党を募集」とある。有権者の声を“見える化”するプロジェクトで、協力者を募集するという内容だ。昨今の選挙はインターネットに大きく左右される傾向がある。昨年の都知事選、先の兵庫県知事の出直し選挙などがいい例だ。ネットを効果的に使うものが、政治的勝者になる時代が目の前に迫っている。そんな時代を先取りしようというわけだ。デジタル後進国日本は、旧態依然とした堅牢な“政治的常識”という隔壁に囲まれている。そんな政治の世界にこのプロジェクトは、蟻の一穴を穿つかもしれない。なんとなくそんな気がした。

プロジェクトリーダーの庵野氏とは、そも何者か。知っている人は知っている。昨年7月の東京都知事選に立候補した人だ。誰も注目しなかった泡沫候補。だがこの人の経歴がすごい。Wikipediaによると「1990年生まれ、東京都出身。開成中学校・高等学校卒業。東京大学工学部システム創成学科で松尾豊教授の研究室に所属。AIや機械学習を学ぶ」とある。日本を代表するAI研究者である松尾教授の弟子と言っていいだろう。れっきとしたエンジニアだ。AIを政治に活用するという分野で世界の最先端を走っているのが台湾だ。プロジェクトを推進しているのが、かのオードリー・タン氏。コロナ禍でAIを活用して被害の拡大を未然に防いだ実績がある。その人の影響を受けた庵野氏が協力者の募集を始めたのだ。どうしていま?いうまでもない。今年は7月に参議院選挙と都議会議員選挙を控えている。このプロジェクトに協力するかしないか、それによって政党のデジタル感度が明らかになる。その感度が勝敗を左右するかもしれない。

トランプ就任から一夜明けて、次のニュースが目に止まった。主要メディアが足並みをそろえて報道している。「ソフトバンクGなど3社、米AIに最大5000億ドル投資 トランプ氏発表」。これはロイターの見出し。ソフトバンクにOpen AI、オラクルが加わって、今後5年間に最大5,000億ドルを投資するのだという。結果はどうなるかわからないが、3社の経営リスクは意外に小さいのかもしれない。いずれにしろ、紙の保険証にこだわるどこかの政党のように、日本では政治とデジタルは極めて遠い関係にある。そんな中で庵野氏が始めようとしているプロジェクトは、近い将来の日本政治のあり方を左右するかもしれない。都議選、参院選に向けて有権者の声が瞬時に把握できるようになれば、候補者の対応も変わってくる。SNSを流れる膨大なビックデーターを見える化し、「178万円の是非」に関する民意を明らかにして欲しいものだ。石破内閣の退陣か継続かでもいい、民意に沿う政治が問われているのだ。意外に“AI政治”の幕開けは近いのかもしれない。