日銀は本日の金融政策決定会合で政策金利の0.25%引き上げを決定する見込みだ。発表は正午前後になるだろう。世界の経済環境は激しく揺れ動いている。そんな中で米国経済は1人勝ち状態。絶好調だ。だが少し前、米国の経済指標に多少の翳りが見え始めた。これを受けてF R Bはいま利下げを推進しようとしている。にもかかわらず経済活動は予想に反して活況をていしている。原因はトランプ大統領の復帰だ。20日の就任直後から大統領令を連発、バイデン前政権の政策をことごとくひっくり返している。減税の継続や法人税の引き下げ、関税付加と脅しながら相手の譲歩を引き出そうとする強気な姿勢が、マーケットや経済関係者に好感されている。昨日はダボス会議にビデオ出演。トランプ政権の政策を例の調子で全面展開した。その中で特に強調したのが原油価格の引き下げ。ブルームバーグは次のように伝えている。

「トランプ米大統領は23日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でオンライン演説し、サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)に原油価格の引き下げを要請する方針を示した。関税を使って米国への製造業回帰を目指す考えも改めて示した。また、金利の即時引き下げを要求すると主張。金利上昇により財政赤字が膨らみ、バイデン前政権下で経済的惨事を招いたと述べた」。注目すべきは原油値下げと金利引き下げだ。利上げを模索している植田日銀にとっては頭の痛い発言だ。昨日発表された米失業保険の継続受給者数は3年ぶりの高水準を示している。力強かった経済指標にも若干の翳りがチラホラしている。世界の趨勢は利下げ方向に転換しつつある。そんな中で日銀は利上げを模索している。理由は簡単だ。円安が加速しており、輸入物価が再度上昇に転じ国内物価に一段の上昇圧力がかかりそうだからだ。

トランプ大統領の強要で原油価格が低下し物価が沈静化、金利が世界中で低下するかどうか、現時点ではまったくわからない。だが、トランプ氏の発言が何らかの形で世論を後押しする可能性もある。消費者の物価見通しが低下すれば、実際の物価に低下圧力がかかる可能性もある。世論の影響は政治だけではなく、物価をも左右する時代になっているのだ。日銀の正副総裁、審議委員はいま金融政策決定会合で議論をしている。0.25%の利下げが99%確実だと個人的には確信しているが、植田総裁がきのうきょうの流れを受けて利上げを保留するようなことがあれば、日本を取り巻く経済環境の特異性が改めて浮き彫りになる。10年続いた異次元緩和の後遺症がこんなところにも見え隠れしている。金融政策の正常化は一刻の猶予もならない。だがそれには時間がかかる。日銀にとっては頭の痛い状況が続く。