トランプ大統領が1日、選挙公約である関税を発動する大統領令に署名した。実施は4日午前0時から。カナダ、メキシコにはすべての商品に25%の関税を賦課する。中国には10%を追加として賦課する。カナダ、メキシコはすでに25%の報復関税を課す方針を表明している。中国はとりあえずWTOに提訴、追加関税の不当性を訴える。これとは別に米国内には今回の関税の不当性を訴えようとする動きもある。ロイターによるとトランプ大統領は今回の関税賦課の根拠として、国際緊急経済権限法(IEEPA)の前身であり1917年制定された敵国通商法(TWEA)を持ち出している。貿易・法律の専門家からは「法律の適用に異論が出ており、法廷闘争に発展する可能性が高い」と見られる。報復関税に法廷闘争と、トランプ関税の先行きは不透明感に包まれている。3日にはトランプ氏とカナダ・メキシコ両国首脳との電話会談が予定されている。貿易戦争は回避できるか、公約の実現は波乱含みだ。

もう一つの懸念はマーケットの動揺だ。週明け3日の日経平均は取引開始と同時に売りが殺到、一時1000円を超える急落で始まった。世界中の取引所がこれから順次取引を開始するが、最後に開く米国市場の反応がどうなるか、マーケットは終日大荒れの展開になりそうだ。トランプ氏の大統領復帰が決まってからマーケットはこれまで、同氏の掲げる公約を評価しトランプ・ディールを煽り立ててきた。そのマーケットが公約を実行した途端に反旗を翻した格好になっている。この状態はこれから先も続くのだろうか、マーケットの反応も要注意だ。もう一つの懸念材料は堅調な米国経済への影響だろう。ロイターは今回の措置について「世界的な貿易戦争のリスクを高める」と主張する。加えて「米企業の収益に打撃を与え、インフレ圧力を生じさせ、米国の利下げへの期待を打ち消し、カナダドルや中国人民元などの通貨のさらなる下落につながる可能性がある」と、世界経済全体への悪影響に強い懸念を示している。

ロイターに限らない。学者やエコノミスト、アナリストの反応はおおかた否定的だ。とりわけ不透明なのはインフレの先行きだ。対象となる3カ国と米国の取引量は、全体の3割〜4割に達するといわれている。これに25%の関税がかかるのだから物価はその分上昇する。誰もがそう思う。だがこれによって為替市場ではドル高が進展するとの予想が多い。仮にドル高になれば輸入物価の値上がりはその分だけ相殺される。加えて消費者の行動変容も起こるだろう。早くからトランプ氏は一貫して関税の賦課を公言してきた。消費者はそれによって将来の物価高を予想すると同時に、カナダやメキシコ産以外の物品購入に消費行動をシフトさせる可能性もある。行動変容によって消費全体にブレーキがかかるかも・・・。F R Bの金利操作よりこっちの方がオペレーション効果は高いかもしれない。関税賦課の行き着く先はよくわからない。だがその波及効果は予想以上に広く、かつ、深い気がする。