青木勝
日本の物価の現状認識を巡り、政府と日本銀行との間に齟齬(そご)があることが4日の衆院予算委員会での答弁で浮き彫りになった。
立憲民主党の米山隆一氏から現在の日本経済がインフレかデフレかを問われ、植田和男日銀総裁は「現在はデフレでなくインフレの状態にあるという認識に変わりはない」と答弁。これに対し、石破茂首相は「日本経済はデフレの状況にはない。しかしながらデフレは脱却できていない。今をインフレと決めつけることはしない」と説明した。
消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は3年近くにわたり、日銀が目標とする2%以上の水準で推移している。一方、昨年10月に発足した石破政権は、最優先課題に掲げるデフレからの完全脱却に向けて3年間を集中的な取組期間とし、脱却宣言はしていない。日銀がインフレとの現状認識を明確に示している中で、政府の説明には分かりにくさが伴う。
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大和証券の末広徹チーフエコノミストは、「政府としてはデフレ脱却とここで言うと、ポジティブなことであっても人々がインフレで苦しんでいるところに反感を買いかねない」と指摘。これまで実施してきた財政拡張的な政策の根幹部分も変更せざるを得なくなるとし、「デフレ脱却のところは曖昧にして、あまり触れないでいたいというところだと思う」と語った。
デフレ脱却は消費者物価や国内総生産(GDP)デフレーターなどの経済指標を基に、物価が持続的に下落する状況に再び戻る見込みがないかを政府が判断して決める。
日銀は昨年3月に17年ぶりの利上げなどで大規模緩和から脱却して以来、7月と今年1月にも追加利上げを行った。重視する基調的な物価上昇率は2026年度までの見通し期間後半には物価安定目標とおおむね整合的な水準で推移するとの見通しを示しており、今後も正常化路線を継続する見通しだ。
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