日米首脳会談の評価は主要メディアの間で極めて高い、そんな印象を受けている。本当に評価に値する首脳会談だったのか。精査したわけではないが、個人的には、石破総理がトランンプ大統領に「大幅に譲歩した」としかみえない。それだけではない、日米の経済関係にも大きな“禍根”を残した。そんな気がする。その象徴が日本製鉄によるU Sスチール買収問題だ。首脳会談後の記者会見でトランプ大統領は以下のように述べた。「日鉄のUSスチール買収計画阻止に関連し進展があった。石破首相が『買収ではなく、投資だ』と言明した。『もちろん、それで構わない』」と。総理も同じ会見で「投資」と強調。「日本の技術も加えて良い製品を作り出し、それが日本とアメリカ、そして世界に貢献することになる」、「どちらかが利益を得るというような一方的な関係にならないことを大統領との間で強く認識を共有した。大きな成果だと考えている」(引用はロイター)と述べた。

ちょっと待て、「世界に貢献することに日本も投資する」、何という浅はかな理解だ。「貢献できる製品を生み出せず、経営が傾きつつある」から日鉄はU Sスチールを買収し再建しようとしているのではないのか。中国が鉄鋼製品を大量に生産し、大幅なディスカウントで世界中に売りまくっている。結果的に世界中の鉄鋼メーカーの業績が悪化している。この現状を変える戦略がU Sスチールの買収ではないのか。U Sスチール側もこの戦略に同調したから買収に同意したのではないのか。問題は経営戦略なのだ。投資して小さな利益を得ようとする計画とは異質のものだ。買収と投資には雲泥の差がある。総理はそれを理解しているのだろうか。投資という以上、日鉄は買収計画を断念したわけだ。総理との事前調整で少なくともその意向を表明しているのだろう。あわせてバイデン前大統領などを対象とした訴訟も取り下げるということか。仮にそうなら会長、社長以下代表権を持つ取締役は総退陣すべきだ。株主は代表訴訟を準備すべきだろう。

トランプ氏は9日、「誰もU Sスチールの過半数株を持つことができない」とメディアに断言した。読売新聞は同じ日に石破総理にインタビューしている。この中で総理は「精神的な意味、実利の面の二重に大事なことがトランプ氏の心に響いたのではないか」と手前勝手に分析した。事態が解決に向かうかを問われ、「そう思う」とも語った。何をもって解決というのか、日鉄の買収にかける決意を断念させ、小さな利益を追い求めることが問題の解決に繋がるのか。あり得ない。日鉄問題以外にも米国に対する投資額を1兆ドルに引き上げる、日本の防衛力強化をさらに進めることを約束するなど、主要メディアが評価する首脳会談の高い評価は米国への大幅譲歩以外の何ものでもない。「だから許してよ」、石破総理の本音が聞こえてくる。だがトランプ政権は今日、鉄鋼・アルミへの25%関税を発表する。週末には相互関税の発表も予定されている。いくら土下座してもトランプ大統領は許さない。戦わない日本の闘わない総理、主要メディアの評価はなぜ高いのか・・・?