日産とホンダの経営統合に向けた協議が破綻した。協議破綻の責任はどちらにあるのか。ケンカ両成敗ではないが、双方に責任があることは言うまでもない。だが経営危機に陥っているのは日産であり、日産が協議を持ちかけたという経緯がある。ホンダも社内に根強くあった反対論を押し切って協議開始にゴーサインを出した三部敏宏社長に責任はある。対等合併を目指した最終局面で三部社長が行った子会社か提案は、破綻覚悟の提案だったのだろう。というか協議を終了させるための提案だった気がする。解消が決まって日産は新たな再建策を求めてバタバタと動きはじめている。だがその前にやることがある。内田誠社長以下経営陣がまず総退陣すべきだ。自動車業界に何の知識もない筆者がこんなことを言ってもはじまらない。専門家の見解を聞いてみることにする。
まずはサンケイ新聞。自動車業界に詳しいジャーナリストの井上久男氏の見解が掲載されている。「日産の危機感のなさの背景には、自分たちは名門の大企業で何かあれば、政府が助けてくれるというおごりがある」、「経営トップのガバナンス(統治)能力のなさが浮き彫りとなった」、「日産の中堅幹部に話を聞くと、内田氏は決断力がないという見方をしている人が多い。下からの信任も失っており、内田氏がトップでは自力再建どころか、空中分解してしまう恐れもある。いずれにしろ、経営不振の要因を作った経営陣は総入れ替えが必要になる」。強烈な指摘だ。これがジャーナリストの務め。総退陣、大賛成。ついでに何の機能も果たさなかった社外取締役も入れ替えるべきだろう。東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストの見方。「日産経営陣の危機感のなさが目立つ」、「具体策を示すのが遅く、スピード感がない」、「北米事業や中国の販売減は明らかに失策で計画が甘く、内田社長の説明も首をかしげることが多い」。専門家はボロクソだ。
日経新聞はどうか。経営戦略に詳しい立教大の田中道昭教授のインタビューを掲載している。「協議開始の時点から両社の認識のずれは明らかだった」、「日産側はホンダとの対等な関係にこだわりすぎていた」、「日産のプライドが高すぎた」。問題は経営戦略ではない。プライドだったのだ。これからも日産には経営危機がつきまとうだろう。現場で一所懸命働いている社員が可哀想な気がする。過去の実績に胡座をかいていたフジテレビ、国民の声を無視する自民党、その自民党を裏で操る財務省、主要メディアもここに引用した二社以外には経営責任を指摘する記事は見当たらない(見つけられなかっただけかもしれないが・・・)。日本を代表する政界、官界、大企業。これに主要メディアを加えた4業界が過去の実績に胡座をかいている。執拗にこだわるのはいずれもプライド。国力の衰退は必然の帰結か。