来年度予算の修正協議が本格化しているが、進展の兆しはない。唯一の動きは維新の会と自公の間で教育無償化に関する合意文書づくりが始まっていることぐらいか。103万円の壁は自民党が新たな提案を示したが、国民民主党が「あまりにもしょぼい」(榛葉幹事長)と拒否。公明党も反対の意向を示しているようだ。提示された案は重箱の隅を突くような内容で、政治家としての大局観がまるでない。国民民主に拒否されることを前提とした嫌がらせだろう。雁首揃えて協議に臨んだ小野寺政調会長、宮沢税調会長はおそらく、財務省の描いた筋書きをそのまま伝えたのだろう。2人とも財務省の単なる「パシリ」に過ぎない。その昔自民党には山中貞則という税調会長がいた。この人、国民の人気が高く絶頂期にあった小泉純一郎総理を「ゴチャゴチャ言うな」の一言で黙らせた。実力も知識も兼ね備えていた。石破総理にパシリ宮沢を解任するぐらいの力量があれば、日本の将来も明るくなるのだが、そんな気配はどこにもない。
間隙をついて自民党に近寄っているのが維新の会の前原誠司共同代表だ。教育費の無償化で自公と個別に協議。私立高校に通う世帯に対する支援金を39.6万円から45.7万円に引き上げることで合意。合意文書の作成が始まっている。ただし、維新は社会保障費の負担軽減策も要求しており、合意成立は現時点では不透明。というより、維新内部には“にわか党員”である前原氏に対する批判が燻っており、こちらも先行きははっきりしない。野党第1党の立憲民主党も遅まきながら3兆8000億円の修正を求めて自公と協議をはじめた。こちらは無回答のまま協議は継続。6 月に都議会選挙、7月に参院選挙を控えており、自公に限らず野党各党とも党利党略を優勢せざるを得ない事情は理解できなくもない。とはいえ、どんな党利党略も国民の幅広い支持を背景にしなければ成り立たないだろう。いずれにしても修正の結果は後に控えている選挙ではっきりと評価されることになる。
評価のポンインは国民の声だ。緊急性のある課題として分かりやすく問題を前面に押し出しているのはどの党か。国民民主党だろう。知り合いがさりげなく教えてくれた。「103万円の壁撤去を最初に提起したのは誰か、知っていますか」、「国民民主党でしょう」。「違います、自民党です」。調べてみた。「いわゆる103万・130万の壁の除去、転職市場の活性化などを進めていきます」。元文部科学大臣・柴山昌彦氏のブログである。令和5年(2023年4月29日付)の「今日もどこかで全力疾走」とタイトルされた政策論の一コマだ。「壁の除去」と明確に書いてある。石破総理、小野寺政調会長、宮沢税調会長の3人は、国民どころか自民党内の声にも耳を貸そうとはしていない。国民主権とは何か、民主主義とは何か、政党とは何か。来年度の予算案修正で求められているのは単なる金額の問題ではない。民主主義の本質にどの党が一番近いか、それが問われている気がする。