• 市場は「AIの地雷でいっぱい」との指摘、質への逃避で国債大幅反発
  • リスク回避で原油反落、株の損失埋め合わせで金を売る動きも
マンハッタン・タイムズスクエア地区のナスダック・マーケット・サイト
マンハッタン・タイムズスクエア地区のナスダック・マーケット・サイトPhotographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

12日の米金融市場では株が下落。ハイテク企業の業績と商品相場の軟調が懸念された。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6832.76-108.71-1.57%
ダウ工業株30種平均49451.98-669.42-1.34%
ナスダック総合指数22597.15-469.32-2.03%

  ハイテク株の比重が高いナスダック100指数は、2%下落した。シスコシステムズは12%安。同社の弱気な利幅見通しは、半導体メモリー価格高騰による悪影響を示唆した。大型ハイテク株は全て値下がり。ソフトウエア企業に重点を置いた上場投資信託(ETF)は2.7%安で引けた。人工知能(AI)スタートアップのアンソロピックは評価額3800億ドル(約58兆1100億円)で投資家から300億ドルを調達する取引を完了した。AI脅威論による懸念は、物流や商業不動産にも広がった。

  AIは1年余り前から資産クラスを越えて安定した押し上げ要因だったが、数週間程前からは複数のセクターに対する打撃が心配されるようになり、今では広範なリスク見直しの兆候となりつつある。

  強気市場を率いてきたテック産業は大手企業の堅調な決算にもかかわらず、先行き不安が深刻化し、幅広い銘柄のハイテク株に売りが出ている。AI投資の採算を心配するだけでなく、既存産業の破壊を警戒する声が高まっている。

First Day Of Trading For 2026 At The NYSE And NASDAQ
ニューヨーク市マンハッタンのタイムズスクエア地区Source: Bloomberg

  セブンズ・リポートのトム・エッセイ氏は「ここではっきりと強調しておきたいのは、3年前に強気相場が始まってから、これがAIに関する見通しとしては最も不透明なものだということだ」と述べた。「それはテックがこれまでのように回復しないという意味ではない。しかしこの弱さを『よくある路上のでこぼこ』として片付けるのはどうかと思う」と警告した。

  インタラクティブ・ブローカーズのスティーブ・ソスニック氏は、この数週間、特にここ数日の市場環境を「AIの地雷でいっぱいだ」と表現する。ソフトウエアに始まり、保険ブローカー、資産運用、不動産仲介が次々とAIによるビジネスモデル破壊への不安に包まれた。

  著しくネガティブな反応は、モメンタム主導の市場が良いニュースだけでなく、悪いニュースにも過剰反応する可能性を証明していると、ソスニック氏は指摘。また市場心理が極めて大きく変化し得ることも証明したという。

  「この3年間をほぼ通じて、投資家はAIに対して『コップは半分満たされている』のアプローチだった」とソスニック氏は話す。「かつては、ビジネスや業界の効率を上げるうえでAIに何ができるかというのが関心事だった。今では、ビジネスや業界の利益モデルをAIはどうやって破壊するのだろう、という疑問が関心を集めている。投資家が見つけようとしているのは勝ち組ではなく、負け組になりそうな銘柄だ」と述べた。

  ヤルデニ・リサーチによれば、AIが既存の企業機能に取って代わるとの不安が、ここ2週間の市場で産業分野を超えて広がった。ソフトウエアメーカーや保険ブローカー、データサービス、オルタナティブ(代替)資産運用、投資ブローカレッジなどに影響が拡大した。

  バイタル・ナレッジのアダム・クリサフリ氏は「AIは巨額の設備投資と生産性向上を通して景気を押し上げるかもしれないが、株式市場にとっては最終マイナスになりつつある」と指摘。AIは既存産業の株価を「破壊している」と述べた。

  個別企業のニュースとしては、ソフトバンクグループ傘下のPayPay(ペイペイ)が、米国での新規株式公開(IPO)を米証券取引委員会(SEC)に申請した。実現すれば、米証券取引所に上場する日本企業として過去最大規模のIPOとなり得る。

   ホワイトハウスはJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)に対し、クレジットカード金利を引き下げるよう圧力を強めた。アフォーダビリティー(暮らし向き)の改善を掲げるトランプ大統領の要求に沿った動きだ。

  AI新興企業のアンソロピックは、AIの安全規制を支持する議員候補を支援する政治団体「パブリック・ファースト」に2000万ドル(約30億6000万円)を寄付する。全米の議会選挙にシリコンバレーの資金が流れ込む中、「責任あるAI」に向けた取り組みを強化する狙いがある。

米国債

  米国債相場は大幅反発。株価と商品相場が下げ、米景気減速の兆候との見方が広がったところ、30年債入札が記録的な需要を引き寄せた。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.73%-7.3-1.53%
米10年債利回り4.10%-7.2-1.74%
米2年債利回り3.46%-5.4-1.54%
米東部時間16時36分

  逃避需要で利回りは軒並み低下。相場は前日に予想を上回る雇用統計が発表された後の値下がり分を、ほぼ帳消しにした。上昇は30年債入札後に勢いを増した。

  TDセキュリティーズの米国金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「典型的な質への逃避が見られる。株式は大きく下げ、利回りもブルスティープニングの形で急低下中だ」と述べた。

  3月の連邦公開市場委員会(FOMC)について、市場は依然として利下げのチャンスはないとみている。今年最初の利下げは早くて年央という見方が一般的だ。市場が織り込む年内利下げは合計58ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)で、前日の59bpを下回った。

  10年債利回りは一時、年初来の最低水準に近づいた。同利回りは昨年12月から、4%から4.3%の狭いレンジを出ていない。

  JPモルガン・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「今年は株価が下げると米国債に買いが入っている」と指摘。「株式市場では人工知能(AI)銘柄から景気循環株へのローテーションが進行中で、これが米国債を有益なヘッジとして機能させている」と述べた。

  13日に発表される1月の消費者物価指数(CPI)は、前月比0.3%の上昇が予想されている。前年同月比では2.5%上昇と、前月の2.7%上昇からの減速が見込まれている。ニュー・センチュリー・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、コム・クロッカー氏は1月の数値は予想を上回る傾向があることを、投資家は留意していると指摘する。

  「インフレは現行水準もしくはその近辺で定着する可能性が高いと考える」と同氏は述べ、「強いCPI統計で、10年債利回りが4.20ー4.30%に戻すことはあり得るかという疑問には、可能性は大いにあると回答する。そういうリスクがあると考える人は多い」と述べた。 

外為

  外国為替市場のドルは下げを埋める展開だった。円は対ドルで一時153円76銭まで売られた後、上昇に転じた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1182.160.290.02%
ドル/円¥152.76-¥0.50-0.33%
ユーロ/ドル$1.1870-$0.0002-0.02%
米東部時間16時36分

  高市首相の自民党が衆院選で歴史的大勝を収めたことから、財政への不安は和らいだとの見方がアジア時間に広がっていた。対ドルでの円上昇はこれで4営業日連続。昨年12月以来の上昇局面となった。

  米国と日本は5500億ドル(約84兆円)規模の対米投資について、最初の3つの投資案件の絞り込みを進めている。ラトニック米商務長官と赤沢亮正経済産業相との協議の行方が、最終合意に達するかどうかを左右する。両氏は12日にワシントンで会談した。

  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、0.2%下げた後は0.1%高まで戻した。

  米新規失業保険申請件数は先週、わずかに減少した。前の週は厳しい冬の天候要因で申請件数が急増していた。

原油

  ニューヨーク原油相場は反落。世界的にリスク回避のセンチメントが広がる中、米国とイランを巡る最新動向も意識された。こうした地政学的な緊張は供給見通しを引き続き曇らせている。

  トランプ米大統領はイランの核開発計画を巡る交渉について、最長1カ月に及ぶ可能性があるとの見方を示した。一方、合意に至らなければイランにとって「非常に深刻な事態になる」と述べた。市場では、軍事攻撃に発展する可能性や中東の供給リスクへの懸念がくすぶっている。

  米国とイランの緊張が続く中、米国防総省は同地域に海軍部隊を展開している。イスラエルのネタニヤフ首相との11日の首脳会談で、トランプ氏はイランとの合意を優先する考えを示した。ネタニヤフ氏の訪米には、こうした方針の見直しを促し、イランの地域における軍事的影響力の大幅縮小を目指すようトランプ氏に働きかける狙いがあった。

  バンダ・インサイツの創業者、バンダナ・ハリ氏は、価格は当面レンジ内で推移する可能性が高いと指摘。持続的な合意に向けては大きな政治的障害があるため、外交面で進展があっても下押しは限定的にとどまるとの見方を示した。

  その上で、「さらなる敵対的発言や軍事的な示威行動はリスクプレミアムを押し上げる可能性があるが、米国によるイラン攻撃が差し迫っているという状況にならない限り、上昇余地は限られる公算が大きい」と同氏は語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物3月限は、前日比1.79ドル(2.8%)安の1バレル=62.84ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント4月限は1.88ドル(2.7%)下落の67.52ドル。

  金スポット相場は反落。金融市場全般に突如売りが広がる中、株式での損失を補おうと金属を売却する動きが見られた。銀や銅も値下がりした。

  金価格は一時4.1%安。銀の下落率は一時11%に達した。ロンドン金属取引所(LME)の銅相場も下げた。

  MKS PAMPの金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は「すべてが一気に起きた。『リスク回避』の動きのようだ」と指摘。市場が極度のストレス状態に陥る局面では、流動性を必要とする投資家によって金のような安全資産も売られると付け加えた。

  この日の金と銀の下落は、利益確定の売りも一因だった。直近の急騰が投機的な買いに一部支えられていたためだ。

  サクソ銀行のコモディティーストラテジスト、オーレ・ハンセン氏は「金と銀のトレーディングはかなりの部分が引き続きセンチメントやモメンタムに左右されている。こうした展開では上値が重くなる」と述べた。

  フォレックス・ドット・コムのファワド・ラザクザダ氏はこの日の金急落について、「持続的な下降トレンド入りを示すものではない」と指摘。「短期的にボラティリティーが続く可能性は高まる。市場は下値にたまっていた大量の売り注文をすでに消化したため、次の動きは主要なテクニカル水準付近での値動き次第になる」と話した。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時39分現在、前日比137.08ドル(2.7%)安の1オンス=4947.31ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は150.10ドル(2.9%)安の4948.40ドルで引けた。

原題:Nasdaq 100 Sinks 2% as AI Jitters Roil Wall Street: Markets Wrap(抜粋)

原題:Investors Snap Up 30-Year Treasuries Auction Amid Haven Demand(抜粋)原題:(抜粋)

原題:Dollar Drops a 5th Day, Swiss Franc Outshines Peers: Inside G-10(抜粋)

原題:Oil Slips as Risk-Off Mood Overshadows US-Iran Talks Uncertainty(抜粋)

原題:Gold Sinks in Shock Selloff as Traders Cover Stock-Rout Losses(抜粋)