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「歴代の誰よりも短期的視点」ゲイツ氏、トランプ氏憂慮<朝日新聞デジタル>2018年2月20日05時23分

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 米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏(62)が、朝日新聞の単独インタビューに応じた。途上国の感染症対策などに取り組む世界最大の民間財団「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」が13日、2018年の年次書簡を発表したのに合わせたものだ。同氏は、トランプ米大統領の「米国第一主義」が世界の保健分野に及ぼす影響に懸念を表明。日本の支援拡大に期待を示した。AI(人工知能)の将来や、富の偏在など、地球規模の未来像についても論じた。(ワシントン州カークランド=宮地ゆう

ゲイツ氏は年次書簡の中で、トランプ氏について「米国第一主義の世界観には不安を覚える」と懸念を表した。17年3月には、グローバルヘルス(世界保健)関連予算の大幅削減を表明したトランプ氏と面会し、撤回するよう働きかけている。取材に対してゲイツ氏は「米国中心の視点で、歴代大統領の誰よりも短期的な視点で、国際社会との関係を見直そうとしている」と、トランプ氏の姿勢を憂慮した。

ゲイツ氏は「貿易分野でも安全保障でも、米国が国際システムに深く関わってきたことは、我々の大きな偉業の一つだ」と語った。その上で対外援助の必要性について「途上国が社会的・経済的に安定すれば、世界的な感染症の広がりなどを防止できる。米国の国益だけを考えたとしても、長期的にみて好ましいものだ」と重要性を強調した。

トランプ政権の下で、米国が「内向き」に傾斜する中、ゲイツ財団が積極的な支援を期待しているのは日本だ。財団は近年、日本政府や日本企業との協力を深め、昨年には日本に初めて常駐代表を配置した。

ゲイツ氏は「日本が(世界の)リーダー的な存在である国民皆保険制度は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の一つでもある。途上国国民皆保険制度への出発点は、予防接種などのプライマリーケアだ。これは財団の目標とも一致している」と述べた。財団は、日本政府や医薬品メーカーなどと連携して、保健分野の技術革新とグローバルヘルスを支援する「グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)」を立ち上げた。

ゲイツ氏は「非常に大きな成果を上げることができた」と基金を評価。日本の医薬品メーカーについて「新薬開発に多額の研究開発費を投じ、相当な実力を持っている」「世界を市場と位置づけ、成長市場に注目しているのは好ましい。インドや中国などの巨大な市場を視野に入れると、日本では発症率が低い病気も対象となる」などと高く評価した。さらにゲイツ氏は、日本政府の対外援助についても「一時は世界一の援助国だった」と指摘し、「いま以上に対外援助の優先順位を高くするよう願っている」とより一層の貢献を求めた。

「魅力ない職種は淘汰される」

AIやロボットの活用、女性の地位向上、ベーシックインカムなど、ゲイツ氏は未来に向けた国際社会の課題についても語った。

ゲイツ氏は、「人間と同じように、ロボットにも課税すべきだ」と持論を展開したことがある。しかしAI全般について、「ロボットがあれば可能性はより広がる」と肯定的に語った。AIが途上国にもたらす影響も、「貧しい国にとっては良いことだらけだ」と述べた。「途上国にはやるべきことが無限にある。富を創出するには資産と生産性が必要だ。AIは生産性の向上につながる」

AIが労働市場に及ぼす影響について、ゲイツ氏は「働き方に選択の幅が広がり、魅力のない職種は淘汰(とうた)される。店のカウンターに立っていることが生きる意味なのか、考える余裕が生まれるだろう。人間の自由や創造性が高まることに比べたら、機械的な労働がロボットに取って代わられることはたいしたことではない」と語った。

ゲイツ氏は「ロボットを法律で禁止することはいつでもできる。いつか禁止する国が出てくるかもしれない。私はそうした選択肢もありうると思う」と口にしつつ、「働きたいと思えば、働くことができる。ロボットがあれば可能性が広がる」と話した。

AIが人間の仕事を奪うという懸念や、所得格差解消などを目的として、ベーシックインカムの可能性が、世界的な論点として浮上している。政府が一定のお金を、無条件に国民に給付するという仕組みだ。

だがゲイツ氏は「いまの我々の社会はそこまで裕福ではない」と否定的だった。「ベーシックインカムに近い社会保障制度を実施しているのは、人口が25万人程度の、いくつかの裕福な産油国ぐらいだろう。ほとんどの国々は、働かない市民にアパートや車やインターネットを提供したり、レストランや旅行や美術品に使ったりするお金を渡す余裕はない」

一方で「ロボット工学やAI、遺伝子工学などの技術が発達し、生産性が上がれば、より多くの富を人々に分配することが可能になる。社会保障を充実させられる」とも述べた。「増えた富を生産性の向上につなげるか、余暇の時間を増やすか、働きたくない人は寝坊できるようにするか。これは政策の問題だ」

また、財団として途上国の女性の地位向上に力を入れていることについて、ゲイツ氏は「女性が自立できれば、子どものために医療や、十分な栄養を与えられる可能性が高くなる」「女性を支援することで、社会全体が中所得層に移行するのを早めることができる」と意義を語った。

ゲイツ氏は、格差問題についても語った。

ゲイツ氏は10年、投資家のウォーレン・バフェット氏とともに、米国内外の資産家に呼びかけ、資産の半分以上を社会貢献活動に寄付する運動を始めた。「世界一の富豪」として知られるゲイツ氏は、世界の富の偏在について「世界的に貧富の差は縮小してきた。インドや中国など貧しかった国々が裕福になり、その速度が先進国の成長率を上回っているからだ」との現状認識を示した。

ただ格差を示す指標である「ジニ係数」は、世界レベルでは低下しているのに対し、一つの国の中でみると上昇している場合が多いとも指摘。「一部の人たちが遺産相続の際にあまり税金を払わなくても済むよう、政治的な選択がされているからだ。私は、より累進課税が強まる方向に向かうと考えている」と話した。

〈ビル&メリンダ・ゲイツ財団〉 米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏と妻のメリンダ氏が2000年に創設。のちに投資家のウォーレン・バフェット氏も加わった。資産は約400億ドル(約4兆3600億円)で世界最大規模の民間財団。16年は総額約46億ドル(約5千億円)を寄付した。保健や医療、農業、教育分野などの研究者や科学者などの専門家を含む1450人以上のスタッフを抱える。

設立のきっかけは、ビル・ゲイツ氏が毎年数十万人の子どもが、ワクチンで予防できるロタウイルスによって死亡しているという新聞記事を読み、衝撃を受けたことだった。途上国で広がる感染症に対する製薬など、すぐに採算が見込めず政府や企業にとってリスクが大きい分野に資産を投じることで、革新的な技術開発を進めている。

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