アマゾンが納入業者や出店業者に上昇する物流コストを転嫁し始めた。日経Web版によると「通販サイトに出店する店舗の商品の配送を代行するサービスの手数料を引き上げる。大型商品では1~2割の増額となる。物流コストが上昇するなか、出店事業者に負担を転嫁する必要があると判断した。同社は取引先メーカーに販売額の一部を『協力金』として要求していることも判明。販売価格にコスト増が転嫁されるなど消費者の負担につながる可能性もある」と伝えている。少子高齢化の中で労働力不足が深刻化している。クロネコヤマトを運営するヤマト運輸は昨年来、取り扱う荷物の総量規制や手数料の値上げに動いているが、この動きが通販サイトに広がってきた。次は納入業者がいつ値上げに動くが焦点になる。
いいか悪いかは別にして、当たり前のことがようやく動き始めた。デフレ感覚が染み付いている日本経済はこれまで市場機能が停止していた。それがようやく動きはじめるわけだ。深刻な労働力不足が続く中で、通販サイトの取り扱い数量が急増、宅配便による商品の配達が想像を超える勢いで急増した。結果的に宅配業者は過剰労働を強いられ、事業の継続性が危機に瀕する事態に陥った。“危機”に直面した業界最大手のヤマト運輸が昨年、通販業者に手数料の値上げを要請。一説によるとヤマト運輸の得意先であるアマゾンとは40%程度の値上げが実現したといわれている。40%というのは大幅な値上げだが、おそらくそれまでの単価が低すぎたのだろう。この値上げ分をアマゾンは納入業者に転嫁し始めたというわけだ。
アマゾンは自社で仕入れた商品をネットで販売する事業(直販事業)と業者がマゾンのサイトを利用して商品を販売する事業(マーケットプレイス)の2つの事業を展開している。それぞれの値上げがどのくらいになるかは不明だが、ネットを利用する業者は手数料の値上げという形で新たな負担を強いられる。直販事業でも業者は「協力金」が徴収される。かくして値上げの動きが宅配業者からネット業者へと伝播することになる。次はメーカーが商品値上げという形で消費者にコスト転嫁できるかどうかが焦点になる。メーカーの値上げに踏み切れば低迷していた消費者物価に火が付く。コストを吸収するために賃金の抑制やサービス残業を強いるような企業があれば、労働者のみならず消費者からも非難されるだろう。となると、物価の好循環が動き出すはずだが、果たしてどうだろうか・・・。