トランプ大統領がティラーソン国務長官の解任に踏み切った。後任はCIA(中央情報局)のポンペオ長官である。共和党内で草の根民主主義を標榜するティーパーティー派の支援を受けて下院議員に当選した保守強硬派として知られる。時事通信によるとCIA長官に就任した後も北朝鮮に関連した発言で「金正恩氏の排除を示唆したと受け止められ、北朝鮮の強い反発を招いた」という。解任の経緯はよくわからないが、対北朝鮮強硬派の国務大臣が日朝首脳会談に同席する。北朝鮮の金正恩委員長はどのような反応を示すのだろうか。北朝鮮の思惑通りに動いてきた米朝会談。“ほほえみ外交”は今回の人事によって主導権を失うのだろうか。

それにしてもトランプ政権で公になった辞任、解任はおびただしい数にのぼる。政権が発足してわずか1年である。この政権、残り3年の任期を全うできるのだろうか。傍目にみても心配になる。NHKによるとこれまでに辞任した主要人物は以下のとおりだ。政権発足後、1か月も経たないうちに安全保障担当のフリン大統領補佐官が辞任、去年夏にはスパイサー報道官、プリーバス大統領首席補佐官、バノン首席戦略官が相次いで辞任。プライス厚生長官はチャーター機の多用で辞職、ポーター秘書官は家庭内暴力を理由に辞め、同氏と交際していたと報じられたヒックス広報部長も辞任した。トランプ政権の経済政策を主導した国家経済会議のコーン委員長は、大統領と通商政策で意見が対立して辞任した。今回、政権のブレーキ役と目されていたティラーソン国務長官が解任されたことで、トランプ政権は保守強硬派というスタンスがますます強まりそうだ。

それ以上に気になるのは、この先トランプ氏は政権は維持していけるのかということだ。一部メディアは今月初めに、安全保障を担当するマクマスター大統領補佐官が近く交代する可能性があると報じている。娘のイヴァンカ氏とその夫・クシュナー氏は機密情報への接触が禁止され、ホワイトハウス内で急速に影響力を失っている。この政権で誰がトランプ大統領の暴走を止められるのか。北朝鮮強硬派のポンペオ氏も、国務長官就任にあたって大統領の外交政策に従う姿勢を示しているようだ。結局、ホワイトハウスに残るのはトランプ氏一人ということになる。全てをトランプ氏が決める体制が整ったようだ。その先に何が起こるのだろうか。すべての関係者が固唾をのんでトランプ大統領の一挙手一投足を見守る時代がやってきた。