森友学園への国有地売却をめぐる決済文書改ざん問題は何やらメディアスクラムの様相を呈している。改ざんか、書き換えか、真実はどちらかよくわからない。だが、メディアは新聞もテレビも雑誌も、全てを確認したわけではないが、「改ざん」のストーリーに沿って連日ものすごい報道攻勢をかけている。改ざんか書き換えかはともかく、この問題の報道は「忖度」を超えて法律に違反する「事件」に発展しつつある。気になるのはテレビを見ていると「犯罪」と断定するような物言いが横行していることだ。松本サリン事件で河野さんを「犯人」に仕立てあげた雰囲気に似ている。その過程で冷静に事実を分析する報じる側の地道な努力が失われていく。官邸や財務省の肩を持つつもりはないが、魔女狩りのようなメディアスクラムが横行すると真実は逆に見えなくなる。
この問題を細かくフォローしているわけではないから、事実関係はつまびらかには承知していない。暇にあかしてテレビや新聞を見ているだけだが、これだけ政権側に非があるとするモノクロで一方的なストーリーが繰り返されれば、一般の人はだれだって「安倍首相と昭恵夫人、森友学園の親密な関係」が巻き起こした事件と頭の中に刷り込まれるだろう。その可能性は十分あるし、昭恵夫人の過去の言動をみれば疑われても仕方が面もある。だが、この事件の全体像を冷静に眺めれば、朝日新聞が昨年スクープした国有財産の大幅な値引きの是非が、最大にして唯一の解明すべき点だ。ここが解明されればその他のことは付随的にわかるはずだ。政権の「意向」を忖度して、あるいは政権側の指示に基づいてすべてが動いているというストーリーは、現時点ではやはり勇み足だろう。
決済文書の改ざんも資料を読む限り「改ざん」というよりも「書き換え」と言った方がいい気がする。「要望があった」という表現を「申し出があった」と書き換えているが、なぜそんなことをあえてやったのか。昭恵夫人関連の文書を削除したことも含めて、理財局の真意は理解できない。理解できないことをやるから「忖度」は、「官邸や総理、財務大臣の指示があったのではないか」というストーリーに現実味を与える。そして予断がもっと大きな予断を生み出しているのである。まるで「河野さんが犯人だ」と決めつけたサリン事件のようである。繰り返して言うが、忖度がなかったと言っているわけではない。予断に基づいてあまりにも多くの断定的な言葉が飛び交っていることに不快感を感じているのだ。高名な評論家が「民主主義の土台が崩れた」と吠えている。安保法案の時に野党が「戦争法案」と煽ったのと同じだ。松本サリン事件のときも、冷静に事実の解明を進めていれば河野さんが犯人にされることはなかった。