フェイスブック(FB)の株価が急落した。連れて米国のITビック5であるアップルやアマゾン、グーグル、マイクロソフトの株価も大きく下げた。日経新聞によると喪失した時価総額は1000億ドル、日本円にして10兆円を超える。たった1日の出来事である。疑惑の中身やよくわからない。個人情報が流出したわけではない。コンサル会社が不正にデータを取得したのではとの疑惑が持ち上がっている。IT業界にとってビックデータはタイムリーな広告の出稿を左右する鍵だ。その鍵にまつわる疑惑、影響が大きそうな気がする。今回の動きがこの先どこまで広がるか定かではないが、ビックデータと個人情報の保護。この2つの関係はますます難しくなる。

各種メディアの情報を総合すると今回の疑惑はFBがケンブリッジ大学の心理学教授に個人情報を提供したことに始まるようだ。この提供は契約に基づいており違法ではない。問題はその先。この教授がどうやらFBから提供を受けた個人情報をケンブリッジ・アナリティカ(CA)という会社に提供したことが疑惑の対象となっている。CAには米国の著名なヘッジファンドが出資しており、英国のEU離脱を問う国民投票では離脱派を支持、2016年の米大統領選挙ではトランプ陣営に参加していた。なおかつ、CAに出資したヘッジファンドの幹部には、かのバノン前大統領主席戦略補佐官が名を連ねていた。なにやらロシアゲートならぬFBゲートの様相である。

この疑惑を報じたのは米紙NYタイムズと英紙ガーディアン。ともに内部告発者の証言を基に記事を書いたと言われている。内部告発者がどこに所属していたのは明らかではないが、信ぴょう性はかなり高いと見るべきだろう。利用したのはFBが蓄積していた5000万人分の個人情報とみられている。疑惑が本当だとすれば米大統領選挙でのトランプ氏の勝利に大きく貢献していたのかもしれない。IT社会は巨大な格差社会である。同時に特定の分野で一人勝ちが可能になる社会だ。その原因は強いものがより強くなる構造の上に成り立っているからだろう。その構造を支えているのが個人情報であり、ビックデータだ。そこに不正があるとすれば、ビック5が独占するIT社会の基盤にヒビが入ることになる。今後の推移は要注意だ。