米国の債券市場で昨日10年国債の流通利回りが、当面の壁とみられていた3%を超えた。これに伴ってNYダウが400ドル超急落した。2.99%と3.00%の違いは率にして0.01%。この違いに大した意味はない。とはいえ、2014年以来4年ぶりの3%超えには米国経済の先行きを占う上で大きな意味がある。何よりも米経済が力強い成長を続けていることが確認されたことの意味は大きい。これによりFRBは着実な利上げのペースを維持するだろう。そうなれば米金利の先高を見越して過剰流動性の移動がはじまる。昨日のNYダウの急落はそれを懸念した動きとみて間違いない。半面ドルは各国通貨に対して上昇傾向を強めることになる。

米国経済が牽引して世界経済も順調に上昇する。すでに原油価格などは世界的な需要の回復を先取りして上昇し始めている。原油が上がれば世界的に物価の上昇に弾みがつく。2%の物価目標達成に苦吟する日銀にとってこれは朗報か。ドル高が続けば貿易収支の不均衡を問題にしているトランプ大統領にとっては泣きっ面に蜂だ。近々ムニューシン米財務長官が訪中して中国との貿易摩擦解消に向けた協議を行う予定になっているが、米中貿易摩擦に再び暗雲が忍び寄ることになりかねない。半面、市場開放を進めると強調している中国にとっては、人民元の上昇を抑えながら国内の経済改革を推進する余裕が生まれるだろう。中国にとって米国経済の力強い回復はこれ以上ない援軍になる。

問題は世界中にバラまかれている過剰流動性の行き先だ。FRBによる政策金利の緩やかな引き上げにもかかわらず、余剰資金の大半を米国債が吸収してきた。米国債の流通利回りが緩やかな上昇基調をたどえればさほど問題は起こらないだろう。ただ、市場は気まぐれだ。10年国債が3%を超えて今週中にさらに上昇を加速するようなことになれば、パニック的な米国債売りが起こるかもしれない。パニックを起こす要因はほかにも多々ある。何よりもトランプ大統領の気まぐれで、勇み足を伴うツイッターだ。マーケットはデリケートで振れやすい。北朝鮮やイランをめぐる非核化に向けた水面下の交渉が不用意にツイッターに晒されると、市場の狼狽売りを誘う危険性もある。要するに米国債の3%超えは、マーケットの情報感度を敏感にするという点で大きなリスクとなる可能性がある。