自民党の森山裕国対委員長は25日、都内で記者団に対し「野党から内閣不信任案が出されれば(衆院)解散も一つの選択肢だ」と語った。相次ぐ不祥事で攻勢を強める野党をけん制する狙いがありそうだが「“リセット解散”はあり得る」との見方が永田町で広がった。「早ければ6月上旬では」との声も漏れ始めた。

前財務事務次官のセクハラ疑惑や加計学園問題など政権を巡る負の連鎖が続く中、自民党幹部から「解散」の言葉が飛び出した。森山氏はこの日、野党が安倍内閣不信任決議案を国会提出した場合の安倍晋三首相の対応に関し「(衆院)解散も一つの選択肢だ」と言及。

「首相の専権事項」とされる解散について、国対委員長が言及するのは異例。野党が麻生太郎副総理兼財務相辞任などを求めて、安倍政権が最重要法案と位置づける働き方改革関連法案の審議拒否を続けていることに対して、揺さぶりをかけた形だ。

官邸で鈴木宗男元衆院議員と面会した首相は「あらゆる選択肢、あらゆる行動も頭に入れながら、政治の停滞がないよう取り組む」と述べたという。

政界では「平成の“黒い霧解散”はあり得る」との臆測が流れている。「黒い霧解散」とは、安倍首相の大叔父の佐藤栄作首相(当時)が1966年12月、自民党の不祥事などに端を発して衆院解散に踏み切ったもの。

「不祥事続きの状況は今の安倍政権と重なる」との指摘がある。野党が麻生氏の辞任を迫り、国会が空転。与党内にも危険水域が見えてきた内閣支持率を危惧して「早く麻生氏を切るべき」との声が広がる中で、辞任させれば政権運営が不安定になるため、安倍首相は麻生氏を切るに切れない状況に追い込まれているのが現状だ。

永田町関係者は「昨年10月に衆院選をしたばかりで国民の理解を得るのは難しい」とした上で、6月初旬までに開催される見通しの米朝首脳会談の結果次第で「解散に打って出る可能性はある」とみている。

政治アナリストの伊藤惇夫氏は「安倍首相が過去2回解散したのは追い込まれた時だった」と指摘。「外交でこのまま見せ場をつくれなければ、自民党総裁選3選に向けて求心力を回復のための選択肢は解散しか残っていないだろう」と語った。

▽黒い霧解散 佐藤栄作政権下の1966年、閣僚の不祥事や自民党議員の逮捕などが相次ぎ「黒い霧」と呼ばれた。同年12月、佐藤首相は自民党総裁選で再選を果たしたものの、多くの批判票が投じられ政権運営は不安定に。そのため、佐藤首相は求心力回復を狙い12月27日、衆議院の解散に踏み切った。翌年1月の衆院選で予想を覆し安定多数を維持。7年8カ月の長期政権につながる転機になった。