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「金融緩和の副作用で過度なリスクテイク」と前日銀委員の木内氏
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LIBOR上昇などで米国債運用困難化、クレジット物にシフト
国内の超低金利環境のなかで日本の金融機関は、低格付けで高利回りの外国社債など海外クレジット投資を拡大。日本銀行は、米金利の上昇で投資先企業の財務内容が悪化しないか注意が必要だとみている。
日銀の金融システムレポートによると、投機的格付けの高利回り(ハイイールド)債やローン担保証券(CLO)など国内金融機関(有効回答先)の海外クレジット投資残額は2017年末で6617億ドル(約73兆円)に達し、前年末比12%増加。データでさかのぼれる15年3月末からは約29兆円増え、最大となった。
日銀は同レポートで、邦銀は海外クレジット投資に関し十分な資本を積み上げているなどとして、「信用リスクは低位に抑えられている」と分析する半面、将来のリスクには注意を促している。米金利上昇などで「社債などの発行企業の財務内容や債務不履行率にどのような影響が及ぶか注視していく必要がある」と指摘。海外投融資で「リスクが過度に蓄積していないか評価することがより重要だ」としている。
ハイイールド債など海外クレジット投資が膨らんでいる背景について、前日銀審議委員の木内登英氏(野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト)は、25日の電話インタビューで「金融緩和の副作用という形で金融機関の過度なリスクテイクが起きているのは疑いようがない」と指摘。銀行自体の構造改革だけでは収益悪化には追いつかず、「無理なリスク」を取っており、中でも地域金融機関は人員不足などで「リスク判断が難しく、管理はできているのか」と疑問を投げ掛ける。
もぐら叩き
元日銀の木内氏は、海外クレジット投資以外でも、国内金融機関はアパマンローンやカードローン、シェアハウス向け融資を過熱化させていたことを説明。新しい分野でのリスクを急激に増やし、その後、当局に「抑えられると金融機関はもぐら叩きのように違うところに活路を見い出す」という構図が続いていると述べた。
全国銀行協会によると、国内銀行の当期利益は異次元緩和が導入された翌年の14年度以降、減少傾向にあり、利ざや確保に向け外債投資に力を入れてきた。ただ、中心となる米国債は米国の利上げ続きで評価損が発生。資金調達コストのドル建てLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)も昨年末から急上昇し、JPモルガン証券の西原理江シニアアナリストは「米国債ではマージンは取れず、クレジットリスクを乗せる必要が出ている」と指摘する。
S&Pグローバル・レーティングの吉澤亮二主席アナリストは、特に地方銀行が「収益が落ちている中で、どうしても収益を取りに行きたいのは分かる」と海外クレジット投資に理解を示すものの、体力面で大手行に劣る地銀にとって市場動向に左右されやすい「有価証券投資はとんでもないリスクだ」と話す。
一方、マッコーリー・グループの守山啓輔シニアアナリストは、新興国のトルコや南米、イタリアの国債利回り上昇を懸念しているが、邦銀が投資する「クレジット商品全般に対して怖いという感じではない」として、リスクは限定的とみている。