【シンガポール時事】12日のトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談を前に、米朝は朝鮮戦争(1950~53年)の終結合意に向けた最終調整に入った。トランプ氏は7日、「合意に調印することはあり得る」と言明。会談後に共同声明を出す方向で協議が進んでおり、朝鮮戦争終結に関して首脳会談の成果としたい意向を鮮明にしている。
ポンペオ米国務長官は韓国のニュース専門テレビYTNのインタビューに「会談が成功すれば、双方が合意できる声明が発表されると期待する」と強調した。朝鮮戦争の終結に加え、非核化について共同声明にどこまで踏み込んだ内容が盛り込めるかも焦点になる。
トランプ氏は9日、先進7カ国(G7)首脳会議の開かれたカナダのシャルルボワで記者会見し、米朝首脳会談は「一度限りのチャンスだ」と指摘。「(北朝鮮に)永続的な平和と繁栄をもたらす素晴らしい機会になる」と述べ、正恩氏に真剣に取り組むよう呼び掛けた。
4月の南北首脳会談の板門店宣言では、年内に終戦宣言を行い、さらに休戦協定を平和協定に移行する意思を確認した。ただ、法的拘束力のある平和協定の実現には、休戦協定署名国の中国の参加が欠かせず、米朝首脳会談だけで合意するのは困難だ。このため、象徴的な政治宣言として終戦宣言の実現を検討しているとみられる。
一方、本来、最重要議題のはずの北朝鮮の非核化について、トランプ氏は1回の首脳会談で最終合意が実現できないと認めている。ポンペオ氏は「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」が最終目標だと再確認しているが、今回の会談で核計画廃棄の具体的なロードマップ(行程表)などで合意できるか不透明だ。
CVIDに関し、板門店宣言では「朝鮮半島の完全な非核化」が盛り込まれ、2005年9月の6カ国協議共同声明では「検証可能な非核化」にも言及している。トランプ氏が過去の合意以上の譲歩を正恩氏から引き出せるかどうかで首脳会談の成果が問われることになりそうだ。