• 取締役12人全体では前の期比14%増、業績回復で役員報酬も拡大傾向に
  • 海外CEOとの差は依然として大きい-米GMはトヨタの約8倍
トヨタ自動車の豊田章男社長、Photographer: Tomohiro Ohsumi/

トヨタ自動車の豊田章男社長の2017年度の報酬と賞与の総額は3億8000万円と、前の期比18%増加した。増加は3年ぶり。取締役全員の総額では同14%増えた。好業績などを反映しての引き上げとなったが、欧米の競合他社と差はまだ大きい。

25日に開示された有価証券報告書によると、豊田氏の基本報酬は9900万円、賞与は2億8000万円だった。豊田氏の役員報酬が1億円を超えて初めて公開された7年前との比較で約2.8倍となった。創業家出身の豊田氏はトヨタ株を約475万株保有しており、約10億円の配当金も受け取ることになる。取締役12人の報酬総額は19億1700万円で前年から取締役の人数は変わっていないにもかかわらず14%増えた。

トヨタの18年3月期営業利益は前の期比20%増の2兆3999億円と2期ぶりの増益、純利益は過去最高となった。役員報酬は、業績を反映したことに加え、グローバルに高度技術をもつ人材の獲得競争が激化する中で魅力ある報酬体系づくりを進める必要が高まっており、海外の報酬水準なども考慮した。

取締役で最も高額だったのはフランス人のディディエ・ルロワ副社長で10億2600万円と前の期に比べて3億円以上の大幅な増加となった。トヨタは米国でギル・プラット氏など自動運転開発における専門家を外部から採用しているほか、日本でも自動運転のソフトウエア開発で世界中からエンジニアを募っている。

一方、正社員と定年後の再雇用者、期間従業員を含むトヨタの全組合員の18年の平均昇給率は3.3%だった。17年は約3%、16年は約2.4%で年々小幅に拡大している。電気自動車や自動運転といった新しい技術の急速な進展で業界で変化の波が起きており、トヨタは好業績の中でも競争力を強化する必要があると労使間で議論を交わしたとしていた。

トヨタの広報担当の喜多亜貴子氏は、役員の報酬が増加したことについて、「優秀な人材を確保する上で報酬の競争力を担保するとともに、国や地域ごとの報酬水準と個々人の持つ職責とのバランスを考慮し、適切な水準を検討している」とメールで回答した。

トヨタの役員報酬総額は増加したとはいえ、海外の大手企業経営者との報酬格差は依然大きい。ブルームバーグ・データによると、売上高でトヨタの半分を少し上回る規模の米ゼネラル・モーターズの17年のメアリー・バーラCEOの報酬(株式インセンティブなど含む)は2710万ドル(約30億円)。今年退任した独フォルクスワーゲンのマティアス・ミュラー前CEOは1010万ユーロ(約12億9000万円)。

日本の自動車業界で前期の報酬を公表している企業ではホンダの八郷隆弘社長は1億5500万円、三菱自動車の益子修会長が1億4100万円で日本勢の役員報酬の水準の低さは際立っている。

また、豊田氏が新しい競争相手として掲げるIT企業のCEO報酬はさらに高く、グーグルのサンダー・ピチャイ氏の報酬は1億4430万ドル(約158億円)、アップルのティム・クック氏は9880万ドル(約108億円)だった。