• 米は今週、中国からの輸入品への制裁関税を発動させる予定
  • 中国は報復措置を明言している、報復関税の連鎖を招く恐れ

貿易戦争は「良いものであり、簡単に勝利できる」というトランプ米大統領の主張は、経済学者を信じるなら偽ニュースだ。

経済的な消耗戦においては、失うものが少ない国が勝利国となる。最初の交戦は米中両国が今週発表する予定の関税であり、これをきっかけに世界経済の成長を脅かす報復関税の連鎖が始まる恐れがある。

米ピーターソン国際経済研究所の中国専門家、ニコラス・ラーディ氏は、「貿易戦争においては絶対的には全員が敗者となる」とした上で、問題は誰が「相対的に勝利するか」だと指摘した。

ブルームバーグ・エコノミクスの分析によれば、米国が中国からの輸入品500億ドル(約5兆5400億円)相当に追加関税を課し、中国も同様の報復関税を導入した場合、中国が被る打撃は国内総生産(GDP)の約0.2%に相当し、米国はそれよりも若干少なくなる見通しで、両国とも対処可能な規模にとどまる見込み。

しかし、世界の供給プロセスの途絶や南シナ海の軍事的緊張の高まりなど、二次的影響は計り知れない。

元米財務長官のローレンス・サマーズ氏は6月のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「現時点で私は今後の展開に関して極めて強い不安を抱いている」と語った。

ブルームバーグ・エコノミクスの試算では、米関税率が10%引き上げられ、米国以外も同程度の対抗措置を講じた場合、金融市場への影響を計算に入れなくても、世界のGDPは2020年までに0.5%押し下げられる見通し。これは約4700億ドルと、タイの年間GDPと同程度だ。米国は全ての貿易相手国の怒りを買うとみられることから、中国より大きな影響を受ける見込み。

金融市場の動向から判断すると、投資家は米国の方が優勢と判断しているようだ。中国株の指標、CSI300指数は景気鈍化と貿易摩擦が響き、年初来から約14%下げている。一方、米国株の指標、S&P500種株価指数は経済の力強さに支えられ、2%上げている。

また米国が有利な点の1つは、GDPに占める輸出の割合が中国より少ないことだ。世界銀行のデータによると、16年の同割合は米国が約12%だったのに対し、中国は20%近くだった。

原題:Trade War Winner Is Who Loses Least as U.S.-China Tariffs Loom(抜粋)