トランプ大統領がNATO(北大西洋条約機構)の首脳会議に出席した。例によって例のごとく、NATO加盟国の分担金が少ないことに不満を表明した。首脳会議は共同声明を採択し、「国防支出を2024年までに国内総生産(GDP)比で2%以上とする目標実現に、揺るぎない意思で取り組むことを再確認した」と時事ドットコムは伝えている。これだけ見るとNATO首脳会議は大きな成果を収めたことになりそうだが、メディアの大半は「同盟国間に亀裂・NATO首脳会議」といった趣旨の見出しをつけている。共同声明の採択までは平穏な会議という印象だが、そのあとトランプ大統領は首脳会議の場か、会議の後か判然としないが、GDPの4%に相当する負担を一方的に加盟国に要求したとある。同盟国の間に「亀裂」が生じるのも、むべなるかなだ。

トランプ氏はドイツやフランス、メキシコ、カナダといった同盟国には過去の経緯を無視して一方的に厳しい要求をつきつける。半面、ロシアや北朝鮮といった敵対国にはいたって思いやりがあり、フレンドリーな対応をしている。先のシンガポールでの米朝首脳会談では北朝鮮の金正恩委員長と共同声明に署名、CVIDなど米国の要求は何一つ盛り込まなかったものの、北朝鮮が要求していた米韓合同軍事演習の中止に踏み切った。同盟国に厳しく敵対国を手厚く処遇するトランプ大統領の手法、こうしたやり方に違和感を覚えるのは筆者だけだろうか。日本もいずれトランプ大統領のきつい洗礼を受けるだろう。今回のNATO首脳会議でも従来からの主張を繰り返しただけだが、それでも同盟国の間に深い亀裂を生じさせた。

NATOは米ソの冷戦構造に対応する形でヨーロッパが米国を巻き込んで作り上げた軍事同盟である。冷戦の終結でNATOの役割も大きく縮小している。ウクライナの内戦に伴うクリミアの併合やシリア問題など地域紛争は後を絶たないが、戦争よりも対話による問題解決がより重要になってきた。そうした国際政治の流れの中でトランプ大統領が、国防支出の増額という形ではなく、NATOという軍事組織の縮小による負担金の軽減を打ち出せば、加盟各国はもっと前向きになるだろう。そうすれば加盟国間に亀裂を生じさせることもなく、米国の軍事負担も軽減される。トランプ氏の政策がデタントではなく損得勘定にとどまる限り、歴史に名を残す名大統領にはなれないだろう。