今週の17日安倍首相は首相官邸で、EUのトゥスクEU大統領ならびにユンケル欧州委員長と日本とEUの経済連携協定(EPA)に署名した。これによって人口6億人、世界のGDPの3割を占める巨大市場が誕生した。同首相はこの後の記者会見で「保護主義が広がる中、日本とEUで自由貿易の旗手として世界をリードしたい」と抱負を語った。米国が保護主義に転じる中で、日欧が自由貿易体制を死守する姿勢を示す意義は大きい。翌日からは神奈川県箱根町でTPPの首席交渉官会合が開かれた。TPPはいまやトランプ大統領の保護主義に対抗する自由貿易の象徴でもある。加入国は現在11カ国だが、タイや英国など加盟を希望する国が増えている。来年中には新規加盟が実現するかもしれない。自由貿易か保護主義か、TPPが一躍脚光をあびる時代が来そうだ。

トランプ大統領は昨日、EUがグーグルに対して43億ユーロ(約5700億円)の制裁金を科したことに不満を表明した。今回の措置は通商交渉と関係ないが、トランプ大統領は「それ見たことか!EUは米国の素晴らしい企業のひとつであるグーグルに50億ドルの制裁金を科した。間違いなく米国を利用している。だが長続きはしない!」(ロイター)とツイッターに書き込んだ。EUのグーグルに対する制裁は競争法違反を理由にしているが、トランプ氏にはそんなことはどうでもいいのだろう。鉄鋼・アルミの制裁に報復関税で対抗したEUがここでも不公正な制裁を科していると言いたいようだ。これに対してトゥスク大統領は「真のリスクを教えよう。政治的不確実性や激しい言葉、予測不可能性や無責任こそがリスクだ」(日経新聞)と、暗にトランプ大統領をけん制した。

トランプ大統領とEUの間に立つ日本。英国はそのEUと離脱交渉で対立している。そして英国のメイ首相はEU離脱後にTPPに加入する可能性を示唆しているのだ。何のことはない。米国、EU、英国と西側の主要な国々の間で様々な亀裂が生じつつある中で、日本はこれらの国々と自由貿易で良好な関係を築きつつあるのだ。その鍵の一つがTPPということになる。TPPへの新規加入には加盟国全員の賛成が必要。18日、19日と2日間にわたって開かれた首席交渉官会合では「(新規加盟を希望する国があれば)11カ国が歓迎する方針を確認した」(日経新聞)という。いまのところタイとコロンビアが加入を希望している。インドネシアと英国も加盟を希望するとみられる。世界が注目するTPPだが、国内での評価が意外に低いのが気になる。