【ワシントン=永沢毅】ポンペオ米国務長官は30日、ワシントンで演説し、インド太平洋地域のインフラ整備などを支援するファンドを設立すると表明した。トランプ政権が提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」の柱の一つと位置づけ、広域経済圏構想「一帯一路」などを通じて影響力を強めている中国に対抗する。ポンペオ氏は全米商工会議所が主催するビジネスフォーラムで演説。「インド太平洋地域への関与が米国の国益だ」と述べ、関与を継続する方針を改めて強調した。

 経済分野での関与拡大を訴えるなかで、米国からの民間投資を促進する施策としてファンド設立を提案した。投資分野はインフラやエネルギー、デジタル経済を想定。まず1億1300万ドル(約125億円)を拠出し、順次増額する。

 ポンペオ氏は中国を念頭に「私たちは決してこの地域の支配を目指さないし、他国がそうすることにも反対する」と力説。「政治的影響力を目的に投資をしない」とも語った。中国は一帯一路の沿線国に返済不能な多額の資金を貸し付け、返済の代わりに重要インフラの運営権を得ていると批判されており、米国がこうした手法と一線を画すことを明確にした。

 演説に先立ち、米国務省のフック政策企画局長は記者団に「政府の役割はできるだけ控えめにし、民間の活力を引き出すことに重点を置く」と説明。透明性や持続可能な開発を重んじる方針を示していた。

 ポンペオ氏は1日からシンガポールで始まる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議にあわせ、同国とインドネシア、マレーシアを歴訪する。インド太平洋戦略への協力を各国に呼びかける。

 トランプ大統領は2017年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、日本、オーストラリア、インドとの4カ国による協調を軸としたインド太平洋戦略を推進すると表明。その後、具体策の検討を進めていた。