米中の貿易摩擦が解決に向かう兆しがない。そんな中で、中国の習近平主席をめぐる悪い情報が散見されるようになってきた。産経新聞がこのテーマを執拗に追いかけているような気がする。今日付の朝刊(Web版)には「北戴河会議控え…スローガンから『習近平』消えた 宣伝部門の閣僚級解任」と「人民日報は『行間を読め』、消えた言葉と表れ出した言行不一致」の2本の記事が載っている。前者には「中国共産党の指導部や長老らが河北省の避暑地に集まり、人事や重要政策について非公式に議論する『北戴河会議』が間もなく始まる。米中貿易摩擦の激化を受けて習近平総書記(国家主席)への批判が党内外で表面化しつつある中、重要会議の拠点でも党のスローガンから習氏の名前が激減し、習指導部の苦しい立場をうかがわせている」とある。
中国政府は首相が経済政策を担当し、それ以外の重要政策を主席が統括するスタイルが一般的だった。習近平主席と李克己首相、ライバルだった2人が政権を分け合う形で政策運営を続けてきた。ところが、習主席が独裁色を強めるに従って経済政策も主席主導で進められるようになり、李首相の存在感が急激に薄くなった。代わって重用されるようになったのが、主席の側近と言われる劉鶴副首相である。同副首相が今年に入ってから米国との通商交渉の窓口となり、米中間の貿易摩擦は中国側が米国製品を大量に購入することで一旦は収束するかに見えた。ところがその劉副主席に対してトランプ大統領が不信感を表明したあたりから雲行きが怪しくなり、収束どころか貿易戦争突入かといった事態に発展したのである。
こうした経緯を経て習主席の権威に陰りが見え始めたという報道が、メディアの間で相次ぐようになってきた。北戴河会議を取り上げた産経新聞は中国がらみで「人民日報は『行間を読め』、消えた言葉と表れ出した言行不一致」という記事も掲載している。この記事は中国の新聞は書いてあることよりも、書いてないことの方が重要だと指摘している。そして、最近新聞紙面上に登場しなくなった言葉が「一帯一路」と「中国製造2025戦略」だという。いずれも習主席の最重要戦略である。その2つの表現が新聞紙面から消えたことは習主席の権力に陰りが見られることを間接的に表しているという。トランプ大統領の無謀とも言える追加関税攻勢で、巨漢・中国は慌てて舵を切り替えようとしているのかもしれない。これが事実なら国際政治は一段と不透明感を強めることになる。