トランプ大統領がきのう、メキシコと行っていたNAFUTAの再交渉がまとまったと発表した。そして、再交渉を拒否していたカナダに対して協定に参加するよう求め、「参加しない場合は取り残される恐れがある」(bloomberg日本語版)と警告した。カナダのフリーランド外相は欧州訪問を早めに切り上げ、28日にワシントンで協議を行う予定だとbloombergは伝えている。何の根拠もないが個人的にはカナダはトランプ大統領の呼びかけを受け入れるのではないかと思う。米議会の反トランプ派と組んで、あくまで米国とメキシコの二国間協定に反対する道は残されている。だが、それはあまり現実的ではないと思う。かくしてトランプ大統領による“ディール”は勝利する。中間選挙にも影響があるかもしれない。

米国とメキシコの合意内容は①自動車の関税をゼロにするための条件である域内部材調達比率を現行の62.5%から75%に引き上げる②自動車の製造工程の40-45%を時給16ドル以上の地域で行う③5年後というサンセット条項を見直し協定を6年後に見直すーというもの。米国の要求をメキシコが飲んだと言っていいだろう。NAFUTAの見直しということであれば、この条件をカナダが飲めば通商交渉の改定はすんなりといく。現時点ではカナダがこれにどう対応するか不透明だ。フリーランド外相の報道官は27日の電子メールで、「カナダの署名が必要だ。われわれは新NAFTAがカナダとその中間層にとって良いものである場合に限り署名すると説明した」とbloombergは伝えている。カナダは内心面白くないだろう。気持ちはわかる。果たしてこれからどうするか、大きなポイントになる。

トランプ大統領は16年の大統領選挙の時からNAFUTAの見直しを公約に掲げてきた。いろいろと批判はあるものの、選挙公約を約束通り実現したという意味では実行力のある大統領ということになる。ただ、その手法はあまりにも独善的でかつ、強圧的だった。不法移民の排除やメキシコ国境に壁を作るといった政策と瓜二つである。北朝鮮の非核化も歴史的な経緯や専門家の意見を顧みることなく、大統領の個人的な判断で首脳会談を実現した。これまでの大統領に比べるとやり方はかなり独善的だ。短絡的で直感的といってもいいのかもしれない。ただ、そのやり方で成果が出るとなると、トランプ大統領の評価そのものが変わってくるかもしれない。政治のプロでない大統領だからできたとすれば、政治のプロの立場はなくなる。トランプ大統領が得意とする非政治的な“ディール政治”の是非、有権者はこれから問われることになる。