中国のアリババ・グループ・ホールディング共同創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は昨日、1年後に会長を退き権限を最高経営責任者(CEO)の張勇(ダニエル・チャン)氏ら経営幹部に譲ると発表した。bloomberg日本語版が伝えている。アリババは中国を代表するEコマースの会社。1999年に杭州で他の17人とともにアリババを誕生させた馬氏は、20年弱で同社をアマゾンに匹敵する巨大電子取引会社に育て上げた。その実績は世界が認める。54歳という年齢は企業のトップとしてまだまだ戦える年齢だ。それでも1年後に全ての実権を後輩に譲り、自らは教育の分野で社会奉仕に徹するという。マイクロソフトのビル・ゲイツ氏を彷彿とさせる。

 

そのジャック・マー氏の発言録をbloomberg日本語版が伝えている。いくつか気に入ったフレーズを紹介する。「若者が未来への畏れを忘れず、現在に対して誠実に行動し、過去に感謝すれば、機会を得るだろう」。機会を得るとは何か?ビジネスチャンスのことだろう。いやそんな小さなものと解釈する必要はない。若者の人生そのものを指しているのだろう。たとえ金持ちにならなくても、ビジネスで失敗しても機会さえあればいつでも復活できる。人生は無限の可能性を秘めている。現在は過去の未来であり、未来の過去でもある。未来を恐れず、過去に感謝すれば、機会はいたるところに転がっている。若者よはばたけ、マー氏のそんな思いがこもっているのではないか。

 

「世界を変えるのはテクノロジーではないと私は信じている。世界を変えるのはテクノロジーの背後にある夢だ」。これも好きなフレーズだ。ディープラーニングに熱狂し、いまやテクノロジーは宗教にとって変わるほどの勢いを見せている。テクノロジーを愛し、テクノロジーを磨き、テクノロジーに投資せよ。世界中からそんな声が聞こえて来る。もちろんマー氏もテクノロジーを駆使して大富豪にのし上がった一人である。そのマー氏が「世界を変えるのはテクノロジーではない、その背後にある夢だ」と語る。いかにもと英語の教育者といった発想だ。個人的には科学技術の進化は歴史の必然だと思う。だが、成功するかしないかは、その裏にある夢を自覚するかどうかにかかっている。これがマー氏の経営者感覚だ。