• 張氏は07年に淘宝(タオバオ)のCFOとしてアリババ入り
  • CFOは良いCEOにならないと言う馬氏だが、張氏は例外-キム氏
張勇(ダニエル・チャン)氏、Photographer: Vivek Prakash/Bloomberg

時価総額でアジア最大の企業アリババ・グループ・ホールディングのかじ取りを託されたのは財務の天才だ。共同創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が2019年9月に会長職を退くのに伴い、わずか3年前に最高経営責任者(CEO)に就いたばかりの張勇(ダニエル・チャン)氏が会長も兼任する。

公認会計士でもある張氏(46)は、中国の古くからの商慣行にとらわれた市場をテクノロジーを活用し21世紀型の小売業に転換するアリババの「ニューリテール」戦略を主導。張氏はアリババが毎年11月11日に行うショッピングイベント「独身者の日」などの大掛かりな仕掛けでその有能ぶりを発揮してきた。張氏のCEO就任後、アリババの株価は大きく上昇し、時価総額は約4200億ドル(約46兆8000億円)と、メッセージアプリの「微信」を展開するテンセント・ホールディングス(騰訊)をも上回る。

張勇氏、撮影:Vivek Prakash / Bloomberg

張氏は馬氏主導の体制の中で、テクノロジーに先見の明を持つビジョナリーというよりファイナンスの専門家として知られている。短期的な業績を重視するためプロの管理職は好きではないと公言していた馬氏が、張氏に会長職を譲るのはちょっとした皮肉だ。

馬氏は07年、オンラインゲーム企業のシャンダ・イタラクティブ・エンターテインメント (盛大互動娯楽)に在籍していた張氏を引き抜いた。盛大の共同創業者、陳天橋氏との付き合いが長かった馬氏は、陳氏の自宅で張氏の採用についてわびを入れたという。張氏はアリババの消費者向け電子市場「淘宝(タオバオ)」の最高財務責任者(CFO)として入社した。

張氏が今、けん引していかなければならないのは海外事業だ。東南アジアのような市場ではアリババの存在感は高まりつつあるが、欧米では多くの消費者にとってアリババはまだまだ疎遠だ。馬氏は13年まで会長とCEOを兼任していた。今度は張氏がそうした強い権限を持つことになる。

キム・エン・セキュリティーズのアナリスト、ミッチェル・キム氏は「CFOは良いCEOにならないと言う馬氏だが、張氏は例外だ」と述べた上で、アリババが「アジア以外の市場でどのように成長できるかが課題になるだろう」と指摘した。

張勇氏

撮影:アンソニー・クワン/ブルームバーグ

原題:Alibaba’s New Boss: The Finance Vet Who Quietly Shook Things Up(抜粋)