週末、台風24号が猛威をふるう中で考えたこと。それは、財政はいかにあるべきか、ということだ。ポピュリズム政党といわれるイタリアの連立政権はこの週末、来年度予算で見込まれる財政赤字をGDP比2.4%とすることで折り合いをつけた。反エスタブリッシュメント政党の「五つ星運動」の代表であるディマイオ氏と、移民排斥を訴える「同盟」代表のサルビーニ氏が合意した。2人は連立政権の副首相でもある。穏健派のマッタレッラ大統領とトリア財務相は財政健全化を優先し、赤字比率をできるだけ小さくしようとしていた。トリア財務相の目標は1.6%だったとの報道もある。大統領と財務相の意向に反してこの数字が2.4%に決まったことは、財政の健全化を最大目標とするEUとの関係や、世界中の財政論議に波紋を広げるような気がする。

 

世界中の国々で国家財政は悪化している。遠因は10年前のリーマンショックといっていいだろう。景気の悪化にともなう失業率の増加を背景に、世界中で財政主導の景気対策が実施された。その結果、景気は最悪の事態を回避したものの、財政に過大な赤字が残された。リーマンショック後の世界経済は景気回復と財政再建という二項対立のなかで揺れ続けてきたと言っていい。財政再建を優先すれば失業者の増大という形で国民の負担は増える。景気を優先すれば国民の当面の負担は回避されるものの、後の世代に巨大な財政赤字という借金を残すことになる。今を優先するか、将来に備えるか、世界中の政治はこの二項対立の中で論争を繰り返してきた。大統領候補を争った米民主党のサンダース氏や英労働党のコービン党首など、野党の中にも財政再建よりも景気拡大を優先するという考え方の政治家が増えている。

 

日曜日の朝日新聞。「欧州に波及、悪化したい財政」という特集がこの間の事情を解説している。サブタイトルは「再建へ緊縮策、痛みなお」「地方疲弊、離脱の一因になっている」である。この中に昨年政府が公的資金を投入して救済したモンテ・パスキ銀行の動きが紹介されている。同行は中小企業融資が90%以上を占めるが、最近の景気低迷で融資基準を厳しくしている。その結果「地元企業はお金を借りるのに困っている」とある。財政を健全化するために国の予算を緊縮化した結果、景気が低迷して銀行の不良債権が増加。これを受けて銀行は融資基準を厳しくし、その結果として中小企業向け融資が減少して景気の低迷に拍車をかけている。典型的な悪循環である。台風の影響で日本中のインフラが痛んでいる。痛んだインフラにカネが回らなければ、自然災害の防止する力も弱体化する。財政健全化か景気か、答えが見つからないうちに景気は来年以降急激に悪化するような気がする。