パキスタンのカーン首相=8月13日、イスラマバード(AFP時事)

【ニューデリー時事】8月に政権交代が行われたパキスタンで、中国政府が主導するシルクロード経済圏構想「一帯一路」の枠組みで計画されていた鉄道改修事業の見直しが発表された。累積する対中債務への懸念が原因。「一帯一路」関連事業をめぐっては、マレーシアやモルディブでも、政権交代に伴い見直しの動きが出ている。

モルディブ、「中国離れ」成るか=円滑な政権交代に懸念-大統領選から1週間

 パキスタンのラシード鉄道相は1日、南部カラチと北西部ペシャワルを結ぶ鉄道の改修計画について「費用を82億ドル(約9300億円)から62億ドル(約7000億円)に縮小する」と表明した。物流の向上を目指し、中国西部とパキスタンのグワダル港を結ぶ中パ経済回廊(CPEC)の一部として、中国から融資を受けて実施予定だった。

縮小の理由についてラシード氏は「パキスタンは貧しい国で、莫大(ばくだい)な債務の負担に耐えられない」と強調。CPECの基幹事業として、鉄道整備は引き続き進めるものの、予算をさらに減らす可能性にも言及した。

カーン新首相は、7月の下院選直後の演説で「CPECの成功に向け、中国と共に前進したい」と親中路線継続を宣言した。一方、対中債務はCPEC関連だけで2017年の国内総生産(GDP)の5分の1超に達しており、財政健全化のため事業見直しを迫られている。

「一帯一路」関連事業をめぐっては、5月に政権が代わったマレーシアで中国の融資を伴う鉄道計画が中止された。9月末に大統領選が実施されたモルディブでも、GDPの4分の1超に達する対中債務を懸念し、「国の発展には負債の返済能力も問われる」と訴えた野党候補ソリ氏が当選。巨額な債務への懸念が広がりつつある。