決定は、同高裁長官として岡口氏を厳重注意し、審理から外れた戸倉三郎裁判官を除く14人全員一致の意見。

 決定によると、岡口氏は5月、公園で拾われた犬の返還を元の飼い主が求めた民事訴訟について「この犬を捨てたんでしょ?3か月も放置して」などと自身のツイッターに投稿。原告の抗議を受けた同高裁が7月に懲戒を申し立てていた。

 決定はまず、裁判所法が懲戒対象とする「裁判官の品位を辱める行状」について「職務上か私的かを問わず、裁判官に対する国民の信頼を損ね、裁判の公正を疑わせるような言動をいう」と初めて定義した。

 その上で、岡口氏はこの訴訟を担当しておらず、訴訟内容を検討した形跡もなかったことから、「裁判官が、表面的で一方的な情報や理解のみに基づいて判断するのではないかという疑念を国民に与える」と指摘。「原告の提訴を揶揄やゆするともとれる表現ぶりと相まって原告の感情を傷つけ、裁判官に対する国民の信頼を損ね、裁判の公正を疑わせる」として、裁判官の品位を辱める行為だと結論づけた。

 岡口氏は「表現の自由」を主張したが、決定は「表現の自由を有することは当然だが、岡口氏の行為は裁判官に許容される限度を逸脱している」と退けた。

 一方、岡口氏は昨年12月、東京都江戸川区の女子高生殺害事件を巡り、「無惨にも殺されてしまった17歳の女性」などと投稿し、厳重注意を受けていた。決定は、今回の投稿が厳重注意から2か月しか経過していなかった点を重視し、「強く非難されるべきだ」とした。

 東京高裁は「高裁所属の裁判官が戒告に至ったことは遺憾で重く受け止めている」とのコメントを出した。

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 決定を受け、犬の返還訴訟で原告代理人を務めた渡辺正昭弁護士は取材に「最高裁の判断は当然だ」と述べた。女子高生殺害事件の被害者の母親の岩瀬裕見子さん(50)は「岡口氏の行為が間違いだとはっきり認められ、処分が出たことはよかった。再発防止に努めてほしい」と話した。

2018年10月17日 20時53分 Copyright © The Yomiuri Shimbun