10月初旬に起こった世界同時株安あたりからなんとなく嫌な予感がしていた。その予感が一つずつ実現しているような錯覚に陥ることがある。もちろん想定外のことばかりなのだが、予兆めいたものがあるような気がして仕方がない。暗雲は暗雲同士でどこかで繋がっているのだろうか。とりあえず、最近現実になりつつある世界の不安定要因を列挙してみた。最大の懸念要因はサウジアラビアのジャーナリスト殺害疑惑だろう。連日の報道を見ているだけで身の毛がよだつような恐怖感を感じる。マレーシアで起こった金正男殺害事件と同じような嫌悪感を感じる。サウジの皇太子に対する疑惑も強まっている。トランプ大統領はどう対応するのか。人権重視を国是とする米国にとっても悩ましい状況だ。もちろん世界中の指導者も頭が痛いことだろう。人権は絶対に守らなければならない。

英国のメイ首相も窮地に立たされている。EUとの離脱交渉が暗礁に乗り上げている。離脱時期の延長論がちらほら飛び交っている。延長に同意すれば国内の保守派との決裂が待ち構えている。さりとて安易に妥協すれば英国経済が致命傷を負う可能性もある。何よりも世界経済に計り知れないマイナスの影響をもたらすだろう。メイ首相の正念場は世界経済の崖っ淵でもある。ブレグジットに加えてイタリアの来年度予算がEUとの争点になっている。欧州委のドムブロフスキス副委員長(金融安定・金融サービス担当)とモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は、イタリア政府に予算案の修正を求める書簡を送った。EUはイタリア政府と真っ向から対決する方針に一歩踏み込んだ。財政規律重視のEUか積極財政か、再び問われる展開である。折悪くEUの牽引役であるドイツのメルケル政権が、地方議会選挙で大敗を喫した。EUにとっても情勢は予断を許さない。

トランプ大統領も相変わらず難問山積である。大統領選挙での公約を実現すればするほど、世界との軋轢が深まる。米中貿易摩擦にはじまりイランの核合意からの離脱、相次ぐ閣僚の辞任、盟友であるサウジの疑惑などマイナス材料に事欠かない。そんな中でケリー米大統領首席補佐官とボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が18日、大統領執務室の外で激しい口論を繰り広げたという事実まで報道されている。大事な時に肝心の側近が大ゲンカではトランプ政権の先行きに悲観的な見方が増えるのは当然だろう。11月の中間選挙で敗北すれば、株価は再び大暴落すると市場関係者は戦々恐々としている。北朝鮮問題もこれからが山場である。日米通商交渉も簡単ではない。ブラジル大統領選挙は右派が大勝しそうだ。不安が不安を呼び起こす。世界中に暗雲が立ち込めている。