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  • 日韓の「解決済み」ひっくり返す 同様の訴訟へ影響必至<朝日新聞デジタル>2018年10月31日05時04分

日韓の「解決済み」ひっくり返す 同様の訴訟へ影響必至<朝日新聞デジタル>2018年10月31日05時04分

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 韓国の最高裁が、元徴用工の賠償請求を認める判決を出した。日韓両国が「解決済み」としてきた問題を、司法がひっくり返した形だ。同様の訴訟への影響は必至で、新たな提訴もありうる。日本政府は即座に抗議したが、韓国政府も世論やこれまでの立場との折り合いをどうつけるか問われることになりそうだ。

「(日本の植民地時代)100万人が国外に強制動員された。今日の判決は、そのような被害に新しい出発点を与えるものだ」

判決後、支援団体は原告4人のうち唯一の生存者である李春植さん(94)とソウル市内で記者会見を開き、今後、植民地支配下の様々な被害について集団訴訟を起こす考えを示した。

弁護団は、新日鉄住金が賠償に応じない場合、財産を没収する強制執行手続きの検討に入るとし、一例として同社が保有する韓国鉄鋼最大手のポスコの株式を挙げた。専門家によると、申し立てはすぐにできるが、株式の場合、国内財産か海外財産か見方は分かれるという。

元徴用工の補償問題をめぐっては2005年、当時の盧武鉉(ノムヒョン)政権が、1965年に日韓が結んだ請求権協定の交渉文書を検討した結果として、日本から受け取った無償3億ドルの経済協力資金には、「強制動員の被害補償の問題解決という性格の資金が包括的に勘案されている」との見解を示した。元徴用工の補償は韓国政府が取り組むべき課題とした。

05年の見解を踏まえる韓国政府と流れを変えた大法院

こうした韓国政府の「整理」に異議を唱える形で、請求権協定を適用しない対象を広げたのは大法院だった。

韓国の裁判所の一審・二審は、原告の一部に対して日本の裁判所が出した「日韓請求権協定で個人請求権は消滅した」とする判決は、韓国でも効力を持つと指摘。原告の主張を退けた。これは韓国政府の見解にも沿った判断だった。

ところが大法院は2012年、「日本の判決は、植民地時代の強制動員そのものを違法とみなしている韓国の憲法の核心的価値と衝突する」と認定。当時の労働実態は「不法な植民地支配と侵略戦争と結びついた反人道的な不法行為」だと指摘し、請求権協定によって個人請求権は消滅したとはみなせないとして、一審・二審判決を破棄、控訴審に差し戻した。この流れで、13年にソウル高裁は同社に賠償を命じた。

韓国政府は05年の見解を踏まえ、自国の予算で元徴用工や遺族を支援する道を開いた。約22万6千人を被害者と認定し、約6200億ウォン(約620億円)を支給した。法曹関係者によると、こうした支援策が不十分だと不満を持っていた元徴用工や遺族が12年の大法院の判決に希望を見いだし、徴用工訴訟に加わったという。

今回の大法院判決も、おおむね2012年に大法院が下した判断に沿ったものだ。ただ、大法院長を含めた13人の大合議体で下した判決は「多数決」だったとした。5人は、原告の損害賠償請求権は日韓で結んだ請求権協定に含まれているとの見解だったとした。

大法院判決は、原告4人が戦時中、当時の日本製鉄の大阪、釜石(岩手県)、八幡(福岡県)の製鉄所に動員され、極度に自由を制限された状況で危険で過酷な労働に従事させられ、食事も不足し、給料を一部しか受け取れなかったと認定した。

支援団体は、原告の李さんが働いていた釜石にある製鉄関連史跡が2015年に、「明治日本の産業革命遺産」としてユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録されたと指摘。今後、元徴用工が働いた場所がユネスコ世界遺産に登録されている点についても、批判する活動を広げていくとしている。(ソウル=武田肇)

「日韓関係の基盤が崩れ去る」 危機感抱く日本政府

日本政府は判決に即座に反応した。

午後2時に判決が出ると、1時間もたたないうちに河野太郎外相の談話を発表。「極めて遺憾で、断じて受け入れることはできない」と厳しい言葉が並んだ。午後4時すぎには韓国の李洙勲(イスフン)駐日大使を外務省に呼び、「請求権協定に明らかに違反し、両国の法的基盤を根本から覆すものだ」と抗議。必要な措置をとるよう要求した。安倍晋三首相も記者団に対し、「あり得ない判断だ」と切り捨てた。

日本政府が厳しい姿勢を示すのは、韓国政府に「本気度」を伝える狙いからだ。外務省幹部は「請求権協定によって構築されてきた現在の日韓関係の基盤が崩れ去る事態になりかねない」と危機感を抱く。外務省は30日付で、韓国側との協議を専門的に担う「日韓請求権関連問題対策室」も設置した。

今後、韓国政府の対応が不十分な場合、日本政府が請求権協定に基づく仲裁委員会の設置を求める可能性がある。日韓両国のほか、第三国から委員を選出して紛争を解決する仕組みだ。これとは別に、国際司法裁判所(ICJ)への提訴も考えられるが、韓国の同意が必要になるため実現するかは見通せない。

日本政府にとっては、北朝鮮政策で連携しなければならない韓国との関係悪化は避けたいのが本音だが、日韓関係は悪化の一途をたどっている。慰安婦問題の合意に基づいて設置された財団の扱いをめぐる問題に加え、10月には韓国で開かれた国際観艦式で海上自衛隊が自衛艦旗(旭日(きょくじつ)旗)の掲揚自粛を求められた。

これらに判決は追い打ちをかけた。それだけに日本政府は韓国政府ができるだけ早く、日本企業に被害が及ばないよう対応することに期待する。

日本政府内には損害賠償を命じられた企業に対して韓国政府が同額を穴埋めするといった対応ができるのではないかとの期待もある。外務省幹部は「(韓国政府は)どうやったら最高裁の判決を無効化できるか。いろいろ考えられるはずだ」と話す。河野氏は31日午前にも韓国の康京和(カンギョンファ)外相と電話で対応を協議する見通しだ。

日本企業に広がる戸惑い

一方で、日本企業側には戸惑いが広がる。新日鉄住金は「請求権協定や日本政府の見解に反するもので、極めて遺憾」とのコメントを出した。同社によると、賠償に応じなければ、韓国にある同社の資産が差し押さえられる可能性があるが、韓国国内にいま資産はほとんどないという。ただ、同社幹部は「米国など第三国にある資産を差し押さえられるようなことになれば大変だ」と不安も口にした。

同じように元徴用工と係争中の日本企業は日本政府の対応などを注視する構えだ。三菱重工業は「他社の判決なのでコメントは控える」(広報)としたうえで、両政府間で問題は最終的に解決しているとの主張を続ける方針を示した。工作機械大手の不二越も「他社の訴訟へのコメントは差し控える」(同)と述べるにとどめた。

今回の判決で、元徴用工が日本企業を相手取って新たな訴訟を起こす動きにつながる恐れもある。訴訟リスクが広がる事態になれば、韓国での事業を縮小・撤退したり、韓国企業との取引を避けたりする日本企業も出かねない。

判決を受け、経団連、日本商工会議所、経済同友会、日韓経済協会の4団体は30日、「今後の韓国への投資やビジネスを進める上での障害となりかねず、ひいては両国間の貿易投資関係が冷え込むなど、良好な経済関係を損ないかねないものと深く憂慮している」とする連名のコメントを出した。

経済界では、元徴用工から訴訟を起こされる日本企業が60社以上に増えるとの見方が出ている。日韓経済協会の是永和夫専務理事はこの日の記者会見で、「潜在的に、今回の裁判の延長線上に日本企業が何社もある」と指摘し、日韓政府に適切な措置を講ずるよう求めた。

経団連の中西宏明会長は同日の金沢市での会見で、「判決が日韓の経済のいろんな今後の関係に変な影響を及ぼさなければいいが。これからの日韓関係にどういう影響があるのか心配している」と述べた。

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