昨日はフランス・パリで世界の首脳が参加して第1次世界大戦終結100周年の記念式典が開かれた。一方、中国の上海では「独身の日」セールのイベントでアリババが、1日としては過去最高の2135億元(約3兆4900億円)を売り上げた。この2つの出来事は相互に何の関係もない。強いて挙げれば同じ日の出来事という程度のことだ。だが、この2つは近未来の世界のあり方を象徴しているような気がする。日経新聞によるとパリでの記念式典を呼びかけたマクロン大統領は、「古い悪魔が再度目覚めつつある」と現在の国際情勢に対する危機感を露わにした。ドイツのメルケル首相や国連のグテレス事務総長も、「世界は多国間主義に立ち返るべきだ」と呼びかけ、孤立主義に逆戻りしかけている世界に警鐘を鳴らした。もちろんトランブ大統領も同席していた。

第1次世界大戦の終結によってドイツは、多額の賠償を課せられた。これに反発した国民は愛国心に目覚め、ヒトラーにつながるナショナリズムを呼び起こした。この時、多国間調整に背を向けて米国は孤立主義に傾倒し、結局は第2次世界大戦につながるっていくのである。戦後賠償と言っても払えないような巨額の賠償金を押し付けられれば誰もが反発する。国際秩序の破綻は第2次世界大戦という最悪の事態を生んだ。式典に参加していたトランプ大統領は、歴史を振り返りながら何を考えていたのだろうか。米国第一主義と偉大な米国の復活を掲げるトランプ大統領の政策が、国際秩序を著しく損なうものであれば、世界は再び世界大戦の危機に直面するかもしれない。米国第一主義がアンバランスな国際秩序の微調整にとどまるなら、国際秩序はやがて安定を取り戻すだろう。

アリババは中国の若者が始めた「独身の日」をビジネスとして飛躍させた。その結果が毎年過去最高を更新する売上高に結びついている。独身の日は単にEコマースの凄まじい現状を見せつけているだけではない。その裏ではAIが活躍し、何億個にも昇る物流が稼働している。独身の日にアリババで買い物をすれば買った商品は早いものでは当日、遅くても1週間以内に自宅に配送されるという。アリババはAIを使って何がどの地域でどのくらい売れるか事前に予想し、近くの倉庫にあらかじめ商品を配送しているという。デジタルとアナログの見事な調和である。もちろん、さまざまな問題も残っているが、近未来のIT社会を完璧に先取りしている。アリババが販売しているのは中国製品だけではない。世界中の商品を扱っている。多国間主義を拒否する米国、一党独裁の中国は経済では多国間路線の王道を行く。米中戦争の勝者はどっちか、勢いは中国にありそうな気がするが・・・。