日産自動車代表取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)が有価証券報告書に自身の報酬を約50億円過少に記載したとして金融商品取引法違反容疑で逮捕された事件で、証券取引等監視委員会が数年前、ゴーン容疑者の指示とみられる会社資金を使った不正な投資について同社側に指摘していたことが20日、関係者への取材で分かった。同社側はゴーン容疑者に再三是正を求めたというが、拒否されたとみられる。東京地検特捜部は、ゴーン容疑者が数年前から不正を認識していた可能性があるとみて調べている。
特捜部が同社の法務部門の幹部を務める外国人執行役員との間で、捜査に協力する代わりに刑事処分を軽くする司法取引(協議・合意制度)に合意していたことも判明。制度は今年6月に導入され、適用は2例目とみられる。
ゴーン容疑者と代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者(62)は共謀し、平成22~26年度の5年間に、ゴーン容疑者が受け取った役員報酬は計約99億9800万円だったのに、計約49億8700万円と過少に記載した有価証券報告書を関東財務局に提出したとして19日に逮捕された。
関係者によると、監視委が数年前に行った証券会社への証券検査で、日産の資金を私的に使った投資など、ゴーン容疑者の指示とみられる複数の不正行為の疑いが浮上した。
このため、監視委は日産側に複数回にわたり、ゴーン容疑者に不正行為をやめさせるよう注意。これらを受け日産側は、ゴーン容疑者に再三是正を促したが、拒否されたという。
日産の西川(さいかわ)広人社長は19日の記者会見で、不正発覚の経緯について「内部通報をきっかけとした数カ月間にわたる社内調査」と説明していたが、社内の一部は監視委の指摘で数年前から把握していたことになる。
日産の社内調査では、ゴーン容疑者の主な不正として、逮捕容疑となった有価証券報告書の虚偽記載のほか、私的な目的での投資金支出と経費支出が確認されたとしていたが、監視委が指摘したのは、この投資金支出だったとみられる。