• 利回り曲線を巡る懸念は株式やドルなどの市場に波及
  • 逆イールドの要因が株式相場の不安材料に、新興国には恩恵も
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

米国株式市場は4日にほぼ2カ月ぶりの大幅安に見舞われた。主な要因の1つには債券投資家による景気リスクの受け止め方の変化がある。

短期金利が長期金利を上回る逆イールドは、景気減速を予兆する最も頼りになる前触れの1つと考えられるシグナルだ。3日には3年債と5年債の利回り格差(スプレッド)が10年余りぶりにマイナスに転じた

  フォート・ピット・キャピタル・グループのシニア・ポートフォリオマネジャー、キム・フォレスト氏は「世界経済の成長減速の兆候がある」と述べた上で、「しかし、それが何を意味するのか。リセッション(景気後退)なのか景気減速なのか。それが逆イールドという破滅の前兆と重なったため、私は注視している」と語った。

他市場への影響は以下の通り。

株式

バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらによると、長短金利逆転は株式にとって悪い兆しだという。同社のメアリー・アン・バーテルズ、アンドルー・シールズ両氏は今週の顧客向けリポートで、S&P500種株価指数が来年、軽度の弱気相場に陥るリスクがあるとして株式保有を減らすよう投資家に勧めた。ただ、懸念材料は、逆イールドそのものではなくむしろその要因だという。

両氏は「米金融政策引き締めと対中貿易を巡る懸念、企業収益の鈍化と利益予想の下方修正の動きは、2019年にかけて株・債券にとって良い材料ではない」と指摘。ボラティリティー上昇と短期的な「ベビー・ベア」相場が起こり得ると付け加えた。

ドル

ドイツ銀行は利回り曲線にドル相場の前兆があると考えているが、逆イールドであるかよりもむしろ、凹型(強気)なのか凸型(弱気)なのかが鍵だという。ロンドン在勤ストラテジストのロビン・ウィンクラー氏は「重要な問題は米国の利回り曲線が他通貨との比較で、逆イールドの形からの足かせを相殺できるほど十分な曲がり具合を保持するかどうかだ」と述べた。

新興国市場

直感に幾分反するかもしれないが、マーカス・アシュワース氏がブルームバーグ・オピニオンで指摘したように、新興国資産にとっては逆イールドは強気シグナルになる可能性がある。米連邦準備制度は、短期債利回りの上昇に居心地の悪さを感じるようになれば、引き締めの手を緩めることを納得する可能性がある。

そうなればドルには新たな逆風になり、新興国資産の下押し圧力を軽減するという。マニュライフ・アセット・マネジメントのマクロ戦略責任者、フランシス・ドナルド氏は「これは新興国市場にとってゴルディロックス(適温)の環境だ。ハト派の米金融当局が金利を抑制し、ドルの弱含みが見込まれるものの成長見通しは依然として安定している」と指摘した。

原題:Tumbling Stocks Show You Can’t Ignore the ‘Harbinger of Doom’(抜粋)