• 東京地裁が勾留延長請求を却下、地検が準抗告を申し立てていた
  • ゴーン容疑者、海外に行ったとしても裁判のため日本に戻る意向

有価証券報告書に報酬を過少に記載したとして起訴、再逮捕されていた日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者らに関する勾留期間の延長請求について東京地裁が却下し、地検特捜部が申し立てた準抗告も棄却した。これによりゴーン容疑者らが保釈される可能性が出てきた。

ゴーン前会長と同時に再逮捕されていた同社前代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者に対する延長請求も却下され、準抗告も棄却された。一方、延長を請求した東京地検は金融商品取引法違反の罪で既に2人を起訴しており、2カ月を期限とする起訴後勾留もある。

東京地検の久木元伸次席検事は勾留延長請求が却下されたことについて定例会見で、必要と考えて請求したもので「捜査への影響は出る」と話した。また、起訴後勾留の扱いについては裁判所が判断することと述べた。被告人としての勾留には接見禁止はついていないとした上で、保釈後にメディアに対して発信するのは「本人の自由」とした。   

日産の広報担当者は勾留延長請求の却下について、裁判所と検察の間の決定だとしてコメントする立場にないと述べる一方、ゴーン、ケリー両被告は取締役としての注意義務に違反したとも指摘。深刻な不正行為についての社内調査で明らかになった有力な証拠に基づいて取締役会で2人の役職を解任したと述べた。  

ゴーン被告と20日夜に接見した大鶴基成弁護士によると、同被告は海外に行ったとしても裁判のため必ず日本に戻ると語った。名誉を回復するため、公判で無実を主張するしかないと述べており、保釈が認められた際には記者会見を開く考えだという。   

元検事の郷原信郎弁護士は「実質1つの犯罪を2つに分けて、倍の勾留期間にしようとすること自体が不当だった」として「極めて適切な判断」との見方を示した。一方、東京地検特捜部による勾留延長請求が認められなかったケースについては「ほとんど聞いたことがない。検察にとっては衝撃だろう」と指摘。「長期勾留するような事件ではなく、早期保釈の可能性は高い」と述べた。

ゴーン容疑者は11月19日に金融商品取引法違反の疑いで逮捕された後、日産の取締役会で同社の会長職を解任されたが、取締役にはとどまっていた。12月10日に起訴、再逮捕されたがルノーでは引き続き会長と最高経営責任者(CEO)の地位を保持している。

主導権争いに影響も   

日産は17日の取締役会で後任会長候補を提案するに至らず、決定を先送りした。一方、ルノーのティエリ-・ボロレ副CEOは日産の西川広人社長兼CEOに早期の臨時株主総会実施を要請する書簡を送り、日産側もこれを拒否する内容の書簡を返信するなど、両社の緊張は高まっている。   

ルノーは現在、日産株の43.4%を保有して議決権を持っている。一方、日産が保有する15%のルノー株には議決権がないものの25%以上まで買い増せば日本の会社法の規定によりルノーの日産株に議決権がなくなる。今後のゴーン前会長をめぐる動き次第でアライアンスの主導権争いに影響を与える可能性がある。