EU離脱の最終期限を2カ月後に控えて英国の議会が混迷の度を深めている。メイ首相がまとめた離脱案を歴史的大差で否決。もはや合意なき離脱しかないのかと思いきや、メイ首相の不信任決議案を否決した後で議会に与野党の代表による超党派協議会が設置された。この協議会は「合意なき離脱」の回避を目指すのだという。メディアの報道を見る限りでは展望なき混迷が続いているように見えるのだが、為替市場も株式市場もさほど動揺していない。結局、合意なき離脱を回避するためにはこうした手続きが必要ということだろうか。メイ首相に華をもたせたくない、されど合意なき離脱も回避しなければならない。議会や議員の複雑な心情を反映させれば、一旦否定した上であらためて合意する、こういう動きになるといいうことか。議会制民主主義のこれが“知恵”なのかもしれない。
合意案を大差で否決したあと議会は、野党労働党の提案した内閣不信任決議案を与党保守党を中心に否決し、メイ首相はとりあえず政権崩壊の危機を乗り切った。その後、超党派協議会の設置を表明し、21日までに対応策を取りまとめることになった。超党派協議会に参加したメンバーからは合意なき離脱を回避するようメイ首相に要求する声が相次いでおり、どうやらこの協議会はソフトランディングを目指しているようだ。とはいえ、保守党の一部には合意なき離脱を容認する声もあるようで、着地点は依然として見えているわけではなさそうだ。今回の動きは合意案を大差で否決する際に事前に出来上がっていたシナリオのような気もする。与野党が参加する協議会に主導権を渡し、協議会が合意なき離脱案をまとめれば今度は議会も否決できない。混迷する状況を打開するための新しい手法と言っていいだろう。
それにしても民主主義というのは厄介な制度だ。厄介なことをやりながら二進も三進もいかなくなった複雑な状況を打開する。ある意味ではこれが高度な妥協の仕組みなのかもしれない。中国の議会に相当する全国人民代表大会は、大会場を埋め尽くした議員が真剣な表情で習近平主席の演説に聴き入る。採決という制度があるかどうかわからないが一糸乱れず団結している。こうした風景に比べれば混迷する英国議会の方がはるかに人間味に溢れている。議会制民主主義が進歩するということは、賛否両論、相反する意見をうまく取りまとめる技術が増えるということだろう。英議会はEU離脱の混迷を受けてまた一つ妥協する術を身につけるのかもしれない。メキシコの壁をめぐって混迷する米議会は、英議会に比べるとまだまだ“熟度”が低いのだろう。
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