春闘の幕開けを告げる労使フォーラムが昨日開催された。経団連の中西会長は「多様な方法で年収ベースの賃上げや総合的な処遇改善を検討してほしい」(日経新聞)と呼びかけた。連合はベア重視の姿勢を示しつつも、「中小や非正規の格差を埋めなければならない」(同、神津里季生会長)と強調した。例年通りの風景である。労使双方の言い分に特段異論はないのだが、労使交渉の枠組みは旧態依然としている。今年は安部首相の関与が比較的少ないという意味では、労使本来の交渉の枠組みに戻ったということだろう。元々賃金交渉は労使の専権事項のようなものだ。それはそれでいいのだが、日本経済の命運を支配している春闘である。新しい発想が欲しい。
マクロの日本経済という点では大幅なベアが不可欠だ。だが、今春闘で大幅なベアを実施するほど企業経営者の心理は強気ではない。むしろ米中貿易戦争や英国とEUの対立、10月には日本の消費税も上がる。こうした点を勘案すれば、景気の先行きに慎重にならざるをえないというが現状ではないか。慎重派が増えれば春闘での大幅な賃上げは期待できない。10月の消費税を考えれば再び日本経済失速の懸念が頭をもたげる。そうしたことを考えているのだろう。中西会長は「多様な方法」で「総合的な処遇の改善」を求めている。労働側も「大幅なベアの実現」とは言わず、「格差是正」を強調する。連合の神津会長はもとはっきりと大幅な賃上げを要求すべきだと思う。それを言わないところがいかにも「呉越同舟」の春闘だ。
「多様な方法」の一つとして副業の大胆な解禁というのはどうだろうか。働き方改革の一環として副業を認めようという企業は増えている。だが、現状では70%以上の企業は副業を認めていない。労務管理が煩雑になることが嫌われている。副業といってもプロ野球選手がオフにサッカーをやるというのは無理がある。関連する業種、あるいは同一業種での副業を積極的に認めてはどうか。例えば経理マンが、オフの時間を使って関連会社の経理をみるというやり方だ。人手不足が蔓延している折でもある。在宅勤務や労働時間の短縮など働き方改革と組み合わせ、負担を最小限に抑えながら年収の増加を図るのである。そんな単純なことはすでに始まっているだろう。発想は無限に広がる。アイデアで春闘を変えて欲しい。