衆院予算委員会は8日、厚生労働省による毎月勤労統計の不正調査問題で、同省の統計担当責任者だった大西康之前政策統括官を参考人招致した。大西氏は不正を昨年12月13日に初めて把握し、5日後に上司の省幹部に報告・協議したと説明。不正問題は半月後の同28日に報道され、根本匠厚労相が1月8日にようやく公表したが、その間、同省の対応が後手に回り続けていた実態が改めて鮮明になった。
衆院予算委はこの日、安倍晋三首相と全閣僚が出席して2019年度予算案の基本的質疑を始めた。厚労省の統計担当責任者だった大西氏は2月1日に官房付に更迭され、その後の予算委で参考人招致されたのは初めて。
大西氏は担当室長から不正の報告を受けた12月13日以降の対応について、定塚由美子官房長ら上司に対し「12月18日に一報という形で話をし、翌19日に(鈴木俊彦・厚労)事務次官らに説明した」と答弁。19日は不正に抽出した事業所のデータを全体の傾向に変換する統計的な補正が行われていなかったことなど、問題の詳細を省幹部が共有したとした。
さらに大西氏は、宮川晃厚労審議官と2人で、同20日に根本厚労相に初めて不正を報告したと説明した。しかし翌21日、同省は勤労統計の10月分の確報値を修正しないまま発表し、安倍内閣は来年度予算案を閣議決定していた。
根本氏は、予算案修正の必要性を知ったのが、自身が記者会見で不正を陳謝する前日の1月10日だったと釈明。政府は予算案に雇用保険の追加給付など6・5億円を増額した上で、同18日に閣議決定をやり直す異例の事態になった。ただ、大西氏は自身の更迭については、厚労省が1月28日に発表した賃金構造基本統計の不正が理由だった、と述べるにとどめた。
一方、「厚労省お手盛り」と批判を浴びた特別監察委員会の報告書に関し、定塚官房長は「(同省)人事課の職員が監察委の指示の下で、報告書のたたき台を作成した」と明らかにした。【松倉佑輔】