[ワシントン 19日 ロイター] – バーニー・サンダース米上院議員が、大統領選に戻ってきた。19日に来年の大統領選へ民主党から出馬すると表明したのだ。ただし現在の情勢は、サンダース氏が大きな政治旋風を巻き起こした2016年の前回選挙とはかなり違っているのは間違いない。 

4年前サンダース氏が民主党に持ち込んだ進歩的(左派的)な政策を掲げる候補者は党内にひしめき合っており、まずはその中で差別化を図らなければならない。77歳という年齢や、新陳代謝が進んでより多様でフレッシュな人材が台頭してきている民主党で、同氏がどんな存在意義を持つのかについて疑問も投げ掛けられるだろう。 

サンダース氏の支持者でさえ、多くは「忠誠心」を保っているが、一部にはトランプ大統領に挑む民主党の候補争いがどうなっていくか推移を見守ろうとする動きが出ている。16年の民主党大統領候補を決める大会でサンダース氏に票を投じたニューハンプシャー州の弁護士ロン・エイブラムソンさんも、今回はまだ態度を決めておらず「2020年は2016年ではない。サンダース氏は当時脚光を浴びたが、20年は彼の出番ではないかもしれない」と話した。 

もちろんサンダース氏には出馬段階でいくつかのはっきりした強みがある。知名度の高さや、小口献金を豊富に集められる力、熱烈な支持者の存在などだ。 

同氏は16年の選挙戦では、候補指名を争ったヒラリー・クリントン氏と民主党全体を左旋回させ、国民皆医療保険や最低賃金引き上げ、公立大学の授業料廃止などを公約して、若者やリベラル派の有権者を強く引き付けた。 

ただそうした政策は今や民主党では主流になっており、エリザベス・ウォーレン、カマラ・ハリス、キルステン・ジルブランド、コリー・ブッカー各上院議員らの候補者も似たような考えを持っている。リベラル系ラジオ番組司会者でサンダース氏を尊敬しているという元ニューハンプシャー州議員のアーニー・アーネセンさんは「バーニーは進歩的政策の扉を開いてくれた。でも新しい声や新顔が出てきていることも認識しないといけないと思う」と話した。 

サンダース氏は、16年の選挙が民主党内に残した「遺恨」にも向き合うことになる。彼がヒラリー・クリントン氏に挑戦したことで、党内の主流派とリベラル派に溝が生まれ、まだそれは解消されていないからだ。 

<課題は支持の広がり> 

サンダース氏は、16年にマイノリティーの得票に苦戦した経験を踏まえ、黒人や中南米系の人たちの支持を得ようと動いている。もっとも白人男性として女性や黒人、中南米系の候補と指名を巡って争っている以上、そうした支持拡大は今回も難しいのではないか。 

サンダース氏の中核的な支持層は今回もほぼ結束して行動しているものの、党内の有力な活動家の大半はどの陣営を支持するかまだ物色している最中、と語るのはニューハンプシャー州のレイ・バックリー民主党委員長だ。同州は早い時期に党大会が開催されるため今後の候補指名レースに与える影響は大きく、16年にはサンダース氏が60%の票を得た。

一方、サンダース氏の側近らは、現段階で抜きん出た候補がいない状態が同氏の追い風になると期待する。ニューハンプシャー州議員でサンダース氏の陣営に参加しているティム・スミス氏は「他の候補が目立つのは非常に難しいだろうが、サンダース氏は既に知名度と一定の支持を持っている」と主張した。 

出馬表明に先立って組織されたいくつかの草の根団体の積極的な動きも力になるとみられる。支持者からは、何十年も進歩的な政策の実現を約束してきたサンダース氏の姿勢が、同じような見解を持つ候補者の中から誰を選ぼうかと考える有権者の心に響くはずだとの声が聞かれる。 

しかしサンダース氏が進歩的な問題への取り組みに一日の長があるとしても、なお正式な党候補になるには力不足かもしれない。エイブラムソンさんは「われわれには、より幅広い層の有権者を取り込める人物が必要だ」と訴えた。