• 設備投資は2.7%増に上方修正、個人消費は0.4%増に下方修正
  • 19年度前半まで拡大軌道維持、財政拡張など支え-SMBC日興

2018年10-12月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、法人企業統計における設備投資の増勢を受けて、速報値から上方修正された。市場予想を上回った。1月のモノやサービスを含む海外との総合的な取引を示す経常収支は、貿易赤字が足を引っ張ったものの、55カ月連続の黒字を確保した。内閣府と財務省がそれぞれ8日発表した。

キーポイント
・10 -12月期GDPは前期比0.5%増と速報値(0.3%増)から上方修正(ブルームバーグ調査の予想中央値は0.4%増)
・年率換算は1.9%増と速報値(1.4%増)から上方修正(予想は1.7%増)
・個人消費は0.4%増と速報値(0.6%増)から下方修正(予想は0.6%増)
・設備投資は2.7%増と速報値(2.4%増)から上方修正(予想は2.7%増)
・1月の経常収支は前年同月比1.4%増の6004億円の黒字(ブルームバーグ調査の予想中央値は1610億円の黒字)
・輸出から輸入を差し引いた貿易収支は46.0%増の9648億円の赤字(予想は1兆1331億円の赤字)-2カ月ぶり赤字
・海外配当金や債券利子などの第1次所得収支は15.1%増の1兆7592億円の黒字

10-12月期法人企業統計では、GDP改定値に反映されるソフトウエア除く設備投資が前年同期比5.5%増と市場予想を上回り、自然災害の影響で落ち込んだ前期から回復。季節調整済みの前期比も2四半期ぶりプラス転換

背景

10-12月期GDP速報値は、自然災害で落ち込んだ個人消費や設備投資が持ち直し、2四半期ぶりのプラス成長。一方、外需寄与度は情報関連材中心に中国向け輸出が弱含み、3四半期連続マイナスだった

内閣府が7日発表した1月の景気動向指数は、一致指数が3カ月連続で悪化。基調判断は既に景気後退局面に入った可能性が高いことを示す「下方への局面変化を示している」と、従来の「足踏み」から下方修正された

エコノミストの見方(発表前)

SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミスト:

  • 設備投資は速報値から明確に上方修正され、実質GDP成長率に対する寄与度は0.4%ポイントから0.5%ポイントへ高まる
  • 日本経済は1-3月期、19年度前半に拡大軌道を維持する見込み。世界経済減速を受けた財輸出全般の鈍化が足を引っ張るも、財政拡張などが支え
  • 19年度後半以降の日本経済は海外発の下押し圧力に苦しむ。米国の利下げ転換で円高が進行、貿易摩擦が生じずとも需要減と価格競争力低下で輸出失速なら、20年度前半にかけて経済の落ち込みは深刻化する可能性高い

第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミスト:

  • 法人企業統計の結果、設備投資と在庫投資の上方修正を主因に、速報値から小幅上方修正されると予想
  • 自然災害による供給制約を背景とした7-9月期の大幅な落ち込み分を取り戻せないという姿は変わらず。輸出の頭打ちを主因に18年の景気が踊り場状態にあったという評価に変更はないだろう
  • 輸出の頭打ち感の強まり、企業業績の伸び鈍化などで製造業からの機械受注に鈍化の動き。設備投資は先行き増加ペースが緩やかになる可能性高い

野村証券の水門善之シニアエコノミスト:

  • 法人企業統計でもソフトウエア除く設備投資が堅調な伸びを示した点を踏まえ、GDP改定値の実質設備投資は前期比2.8%増への上方修正を予想。実質GDP成長率は全体として速報値から若干の上方修正を見込む
  • 自然災害の影響を強く受けた7-9月期からの反動を考慮すると、全体として10-12月期は弱めの成長と評価。堅調な消費を背景とした輸入増が成長率を押し下げた面はあるものの、外需減速の顕在化は否めない
  • 世界景気は急減速を回避しつつも緩やかに鈍化すると予想。基調的に外需動向に左右されやすい日本の経済成長も、同様の推移をたどるとみている