日銀が昨日発表した資金循環表によると、2018年末現在の家計金融資産残高は1830兆円、17年末比1.3%の減少となった。個人金融資産が減少するのは2008年のリーマン・ショック以来10年ぶりのこと。日経新聞によると四半期ベースでみても、「前年を下回ったのは10四半期ぶり」だという。昨年末に急落した株価や投資信託の評価額の減少が金融資産を押し下げた。株が前年比15.3%、投資信託が同12.4%とそれぞれ大幅に減少した。一方現預金は1.6%増の984兆円。家計金融資産の実に53.8%が現預金である。超低金利が続いている割に現預金は減らない。統計には出ない“タンス預金”を含めれば、日本の家計に占める現預金の割合は莫大な規模に達するだろう。これが日本の個人金融資産の特徴であり、問題点の一つだ。
余談だがアポ電で巨額の現金を略取される高齢者が後を絶たない。メディアが連日報道しているアポ電や振り込め詐欺が横行する背景には、個人資産に占める現預金の比率が大きいことも関係しているのではないか。現金がなければ犯罪は起きない。超低金利でも現預金が増える、安心・安全を重視する個人の資産選考を考えれば当然だろうが、現金が現金のまま積み上がるのは経済とってよくない。まして犯罪の温床になっているとすれば、個人の金融資産のあり方を改善する必要があるだろう。政府はもうだいぶ前から「貯蓄より投資」をスローガンに、現預金の投資へのシフトを推奨している。にもかかわらず、現預金の絶対額は増え続けている。裏を返せば株や投信など投資に対する不信感が拭えないということだろう。
現預金とともに個人の資産構成の柱は土地だ。少子高齢化にともない戸建て住宅住宅の空き家が目立って来た。バブル崩壊後地価も地方を中心に下がり続けている。その地価に反転の兆しが見え始めた。国交省が昨日発表した公示地価は、全国平均で住宅地が0・6%上昇(3年連続)、商業地が2・8%(4年連続)上昇した。これまでの上昇は3大都市圏が中心だったが、昨年は地方圏が1992年以来27年ぶりにプラスに転じた。デフレ経済を脱却するためには賃金が上昇し、消費が増えて、投資が増える「好循環」が必要になる。これに地価が上がって株価が上昇すれば鬼に金棒。だが、長年に渡るデフレ経済で期待インフレ率は一向に改善しない。現預金の比率を下げるためには、冷え切った家計を温めながら(賃金を増やす)、金融資産につきまとう不安心理を払拭するしかない。
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