中国の習近平主席とイタリアのコレッタ首相は23日、中国の「一帯一路」計画に参画する覚書に調印した。先進国のなかでは初めて。国内経済が停滞気味の習主席にとっては大きな得点だ。先進国の結束に楔を打ち込む意義も大きい。貿易摩擦で米中が対立している。そんな中で中国はイタリアという強力な味方を得たことになる。イタリアは財政赤字で身動きがとれない。中国と組みインフラ整備に活路を見出したことになる。財政赤字を背景にEUはイタリアを締め付けている。それだけにイタリアにとって「一帯一路」は、喉から手が出るほど欲しかった水源である。「渇しても盗泉の水は飲むな」というEU。泉のように潤沢なマネーを口先にぶら下げる中国。勝負は自ずと明らかだろう。
一帯一路は陸と海から中国の影響力拡大を目論む覇権戦略である。その規模は稀有壮大。要はシルクロードだ。23日にコンテ首相と会談した習主席は、「古代シルクロードの両端は中国とイタリアだった。両国の歴史は2000年以上前に遡ることができる。われわれは今、そのシルクロードに新しい活力を漲(みなぎ)らせようとしている」(Yahooニュース)と切り出した。「かつてのローマを出発点として、西安まで連なっていたシルクロードで絶対的権勢を誇っていたのはローマ帝国だった」と遠藤誉筑波大学名誉教授は指摘する。そのシルクロードをいま中国が北京から攻め上がろうとしている。武器は言わずと知れたチャイナ・マネーだ。財政赤字を抱えポピュリズム旋風が荒れ狂うイタリア。時移ろい水の都でチャイナ・マネーが湧き出そうとしている。
背に腹は変えられない。イタリアはG7の先陣を切って「一帯一路」への参加を決めた。この計画を金融面から支えるがAIIB。これに真っ先に賛成したのは英国である。そのあとフランス、ドイツ、イタリアなどEU各国が雪崩を打ってこの計画に参加した。そのイギリスはいまEU離脱で混迷を極めている。習主席は機を見るに敏だ。AIIBの時はEUと対立していたイギリスを取り込んだ。これを機にAIIBの勢力拡大に成功した。今度は財政難に喘ぐイタリアである。財源で渇望したイタリアは、ためらいなく中国が提供する潤沢な水源に手を出した。こうなればEUが中国になびくのは時間の問題か。これに5Gが絡む。デジタル・シルクロードだ。一帯一路は陸と海から「天空」へと立体的に広がる。「渇しても盗泉の水は飲むな」と孔子は教えた。財政難に喘ぐイタリアは進んで盗泉に手を染めようとしている。一番驚いているのは孔子だろう。
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