今朝のビックサプライズはEU首脳会議が英国の離脱を10月末に延期したことでも、北朝鮮の金正恩委員長が中央委員会総会で米国を挑発したことでも、フィリピンの洞窟で新人類のものとみられる骨の化石が見つかったことでもない。世界中の天体学者が連携してブラックホール(BH)の撮影に成功したことである。宇宙創造の謎の解明につながる大発見である。いくつかの記事に目を通した。そしてこの成功の裏に様々な技術が使われているという事実に気が付いた。100年前にアインシュタインが予言したと言われるBH。その存在が視覚的に確認された意義は途方もなく大きい。いずれノーベル物理学賞を授与されるだろう。

今回の撮影は世界中の天文学者が連携して実現した。プロジェクトの名称は「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」。うまく説明できないが、イベント・ホライズンとはすべての物質を飲み込むBHのギリギリの境界面のことを指すようだ。日経新聞によると日米欧の研究者が南米チリにあるアルマ望遠鏡をはじめ、世界各地に設置されている電波望遠鏡8個を連携させ、乙女座付近にあるM87といBHを撮影した。この連携で必要になるのが時間の正確な共有。ここで使われたのが原子時計で、その正確さは1億年で1秒もずれない精度だという。電子望遠鏡を正確に連携させることによって、「月面にあるゴルフボールを確認できる視力」(日経新聞)が獲得できたという。その視力だと月面のゴルフボールの窪みまではっきり見えるという。そしてこの視力で集めたデータの解析がまた凄い。

日経新聞によると研究チームが5日間の撮影で集めたデータは、「1ペタ(ペタはギガの約100万倍)バイト」を超したという。このデータ量は高性能パソコン約1千台分のハードディスクの容量に相当する。これを解析するのが「スーパーコンピューター」。「信号を増幅し、直径1万キロメートル近いアンテナを持つ巨大な電波望遠鏡に匹敵する解像度を生んだ」とある。アインシュタインの予言に、100年かけて天文学者はようやく追いついた。その裏には、無数の人々によって日々改善・改良されている科学技術が存在している。指数関数的な科学技術の進歩、これに天文学者のたゆまぬ努力が加われば、ブラックホールの謎はいうに及ばず、宇宙の誕生や人類誕生の謎がいずれ解き明かされるかもしれない。