4月30日、カラカスで演説するベネズエラのマドゥロ大統領(左)(AFP時事)

 【サンパウロ時事】反米左派のマドゥロ大統領が独裁体制を固める南米ベネズエラで、米国の支援を受けるグアイド国会議長が1月23日に「暫定大統領就任」を宣言して3カ月余り。互いに正統性を主張して対立する「2人の大統領」は1日に大規模デモを計画し、緊迫した局面を迎えた。

 カラカスでは4月30日、マドゥロ氏が後ろ盾と見込んできた軍の一部が反旗を翻した。軍の離反を呼び掛けてきたグアイド氏は「(マドゥロ政権の)終わりの始まりだ」と歓迎。手詰まり感を深めていたグアイド陣営は、にわかに活気づいた。

4月30日、カラカスで、支持者らを鼓舞するベネズエラのグアイド国会議長(AFP時事)

 ただ、離反は一部にとどまり、政権転覆の勢いを得るには至っていない。グアイド氏は4月30日、「マドゥロが軍の支持も尊敬も受けていないことは明らかだ。抗議行動が実を結ぶことは分かった。圧力をかけ続けなければならない」と述べ、国民に史上最大規模のデモへの参加を訴えた。

 一方、マドゥロ大統領も「暴力をまき散らそうとする小集団を打ち負かした」と主張。離反兵の処罰を警告して軍の引き締めを図り「経験したことのない、異なるタイプの攻撃とクーデターの試みに立ち向かっている」と強調、団結を内外に示すため通りを埋めるよう国民に呼び掛けた。

 両者の緊張がヤマ場を迎えたのは2度目となる。最初はマドゥロ氏が受け入れを拒む米国の人道支援物資の搬入を、グアイド氏が強行しようとした2月23日。この時は海外渡航を禁じられたグアイド氏が、拘束の危険を冒して集積地のコロンビアに入ったが、政権側は国境を閉鎖。グアイド氏は物資搬入の公約を守れず、内外に力の限界をさらす結果となった。

 グアイド氏は、1日のデモに多数を動員し政権打倒の流れに弾みをつけ、軍の一層の離反を誘いたい。このままにらみ合いが続けば変革への期待は再びしぼみかねない。これに対しマドゥロ大統領は、国民に「米帝国主義」のかいらい政権の危険を吹聴。離反した人心回復を狙う。

 治安部隊によるデモ弾圧や、衝突で多数の死傷者が出る事態もあり得る。情勢が一気に流動化する恐れもある。