【ベルリン時事】伝統的に中小企業の存在感が強いドイツで、「欧州や国を代表する大企業」を重視して合併などで規模拡大を促そうとする政府に産業界が反発し、論争が起きている。背景には、人工知能(AI)などの次世代技術をめぐり、規模で勝る米中企業に後れを取ることへの危機感がある。

 アルトマイヤー経済相は2月に公表した2030年までの産業戦略で、「重要事業において必要な規模を有する企業が存在しなければ、国際競争力を失う」と指摘。大企業を重視し、必要に応じ合併などを支援すべきだとした。

 AI研究をリードするグーグルなどの巨大IT企業は、ほとんどが米国勢だ。15年に中国の鉄道会社2社が合併して発足した中国中車の鉄道事業売上高は世界最大で、2位の独シーメンス以下を大きく引き離す。アルトマイヤー氏は、規模により力負けすることに危機感を示している。

 規模重視の政策は既に具体化し始めている。ドイツ政府は国内自動車大手オペルなどが参加する、仏と共同の電気自動車(EV)用電池の生産計画に10億ユーロ(約1250億円)の補助を表明した。

 ただ、企業の数で99%超を占めドイツ経済を支えてきた中小企業側は大企業重視に激しく反発し、強力なロビー活動を展開。今月の欧州議会選後に内閣改造があるとの観測が浮上する中、産業界からアルトマイヤー氏の辞任を求める声も上がっており、議論の行方は不透明だ。