海峡両岸関係協会会長時代の陳徳銘・元中国商務相=2014年12月9日【AFP時事】

 中国は本当に「世界第2の経済大国」なのか。経済規模と国力を同一視し、中国を超大国と見なす風潮には同国内でも自重論が出ている。ある経済閣僚経験者は公の場で「未来のナンバーワンなどと自称してはならない」と警鐘を鳴らした。

◇「未来のナンバーワン」否定

 中国のシンクタンク「中国・グローバル化センター(CCG)」、国連中国代表部などは4月14日、グローバル化に関するフォーラムを北京で開催。これに参加したCCG名誉会長の陳徳銘・元商務相は多国間協力における自国の位置付けについて「(世界)ナンバー2と考えてはならず、まして、未来のナンバーワンなどと自称してはならない」と語った。

 陳氏はさらに、中国は約14億もの人口を抱える「非常に特殊な国」であるとした上で、「どんな1人当たりの経済指標でも14億を掛ければ、世界1位か2位になるし、どんなに大きい経済規模でも14億で割れば、世界70~100位になる」と述べ、自国経済の過大評価を戒めた。

 経済全体の規模ではなく、1人当たりの数値を経済発展の基準とするのは当たり前だが、習近平体制下では、国内総生産(GDP)の規模が世界2位であることを主な根拠とする大国主義的宣伝が展開されており、元主要閣僚という有力者がこうした冷静な見解を公言するのは珍しい。

中国の習近平国家主席=3月26日【EPA時事】


◇経済規模≠国力

 香港の有力紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストも21日の論評で陳氏の発言を肯定的に紹介するとともに、(1)中国経済が今後も米国を上回るペースの成長を続けるとは限らない(2)経済規模イコール国力ではない─と主張した。

 論評は、米国の1人当たりGDPが5万ドルを超えているのに対し、中国は9000ドル台にすぎず、世界平均(約1万2000ドル)にすら及ばないと指摘。さらに、国力は経済規模だけではなく、技術力や軍事力、文化・芸術などのソフトパワーを含むもので、中国は依然として、多くの面で先進諸国の大半に大きく遅れているとの見方を示した。

 今年来日した中国のある政治学者も日本のメディア関係者らとの懇談で、中国超大国論を前提とした質問に対し、「中国経済が規模の面で米国を抜いたとしても、実質的に追い付くには時間がかかる」と答えていた。経済発展の質が重要ということであろう。

 日本では中国超大国論が広がっていることから、東京のある大学教官は「中国が超大国でも先進国でもないことを学生に分かってもらうのに苦労する」と話すが、当の中国では意外に自国の実情を客観視している識者が多いのかもしれない【外信部長・西村哲也】