北朝鮮がきのう、短距離ミサイルとみられる飛翔体2発を新たに発射した。これに関連して日米韓の3国はミサイルという表現は使わず飛翔体と呼び、口裏を合わせたように「事実確認を行っている」とコメント。朝鮮半島の非核化が微妙な段階にあることを反映しているのだろう。北朝鮮の不可解な行動、中国、ロシアを含めた国際社会の腫物に触るような対応。なんとなく、何かをかばっているような雰囲気だ。メディアは日朝首脳会談が現実味を帯びていることを匂わす。安倍首相も「拉致問題の解決が前提」としていたこれまでの立場を「条件をつけずに会談する」と180度転換した。北朝鮮で一体何が起こっているのだろうか。

韓国軍合同参謀本部が北朝鮮の発射した飛翔体を確認したのは今月の4日だ。「午前9時6分から27分(日本時間同)ごろにかけ、東岸の元山北方にある虎島半島から北東に向けて短距離の飛翔(ひしょう)体数発を発射した」と発表した。この時点でミサイルではなく飛翔体と呼ぶことが、3国間で合意されていたのだろう。北朝鮮を追い詰めないという配慮が働いている。トランプ大統領もこの時点では、「正恩氏は北朝鮮の素晴らしい経済的な潜在性を認識しており、それを損なったり、絶ったりすることをしないだろう」(時事通信)、「彼(正恩氏)は、私が彼と共にいることを知っている」(同)など極めて寛容な発言をしている。そのトランプ氏が今回は「米国は極めて深刻に受け止めている」(ロイター)と変化している。

それでも依然として「(北朝鮮との)関係は継続する。北朝鮮が(米国と)交渉を望んでいるのは承知しているが、北朝鮮側の準備はまだ整っていない」(同)と、北朝鮮の動向を優しく見守る姿勢を維持している。先ごろ行われた米韓首脳による電話会談では、韓国が主張する人道支援を目的とした食料援助についてトランプ大統領が同意したと報じられた。そして食料支援の輪は日本を含めた国際的な支援に広がりそうな雰囲気もある。経済制裁を続ける一方、人道的な食料支援で北朝鮮の軟化を促す。そんな作戦だろう。気になるのはこれまで米朝対話を推進してきた金英哲(キム・ヨンチョル)氏など、側近といわれる幹部の人事に大幅な異動がありそうだと伝えられていることだ。ひょっとすると北朝鮮で軍部強硬派が息を吹き返しているのではないだろうか。