著名な中国政治専門家である米コロンビア大のアンドリュー・ネイサン教授は1日、1989年6月の天安門事件から30年を迎えて明治大(東京都千代田区)で開催されたシンポジウムで講演し、当時の中国共産党長老ら17人が事件直後の会議で、民主化運動の武力弾圧を強く支持するなど強硬論を唱えた内部講話の内容を明らかにした。ネイサン氏は、天安門事件を「教訓」に習近平国家主席は強権体制を確立したと解説した。
ネイサン氏が公表したのは、89年6月19~21日に開催された共産党政治局拡大会議での発言。学生に同情した趙紫陽総書記を正式に解任し、後任に上海トップの江沢民氏を抜てきするなど事件を総括した23~24日の党第13期中央委員会第4回総会(4中総会)の準備のため、既に一線を退いた長老らが相次ぎ発言した。
徐向前元帥は事件について「国内外の反動勢力が相互に結び付いた結果であり、社会主義の中華人民共和国を転覆させ、西側大国のブルジョア共和国の属国になるものだ」と強調。聶栄臻元帥は趙氏に触れて「政治的陰謀と野心をあらわにし、われわれを攻撃している」と批判した。
会議では楊尚昆国家主席(当時)が「趙氏が総書記に就任して以降、(党最高指導部)政治局常務委員会には『核心』(突出した指導者)がいなかった」と発言。ネイサン氏はこれを引き合いに、「独裁的な権力を手中に収めなければ板挟みの状態に置かれる。習氏が強大な核心権力を確立したのは天安門事件を教訓にしたものだ」と分析した。
ネイサン氏によると、長老らの内部講話の全容が明らかになるのは初めて。香港でこのほど出版された自身の著書「最後の秘密」に収録されている。
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