香港と中国の関係が険悪になってきた。香港行政庁が中国の意向を受けて 条例を改正しようとしていることに学生を中心とした人たちが反発している。この改正案が成立すれば、中国から逃れてきた容疑者の中国送還が可能になる。米議会指導部は条例改正案を香港議会が承認した場合、香港に付与している貿易上の特権的な待遇を見直す考えだと、ブルームバーグは伝えている。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は秩序の回復に自信を示しているが、デモが沈静化する見通しは立っていない。それどころか国際的に香港行政府ならびに中国を非難する動きが広がっている。習近平政権にとっては第二の天安門事件になりかねない情勢だ。香港のデモは習政権の権力基盤を弱体化させるだろう。

ブルーンバーグによると米民主党のペロシ下院議長は昨日、「一国二制度」の枠組み内で香港に「十分な自治権」があるかどうか「再評価」する法案を議会に提出すると明言し、この法律を成立させるよう米議会に呼び掛けた。「香港人権・民主主義法」と称した法案は数日以内に提出される見通し。これに同調するように共和党のマコネル上院院内総務も同様の声明を発表した。香港の住民は、同改正案が「法の支配を衰えさせ」、「(香港の)自治権を脅かし中国政府の支配力を強めるもの」と「正しく捉えている」と述べている。対するキャリー行政長官は香港テレビに出演、「この問題を理由にやましさを感じることは全くない」と発言。「香港が逃亡犯の隠れ家となるのを防ぐため」改正案は必要だと強調する。

旧宗主国である英国も「深く憂慮」しているとハント外相が表明。行政長官と香港政府に条例案の停止を呼び掛けた。習政権が言論弾圧を強めれば強めるほど、香港への逃亡者は増えるだろう。それを阻止するために条例を改正したい中国と、中国の言論弾圧に抗議するデモ隊。香港騒乱の構図は明確になってきた。米英をはじめ国際世論はデモ隊に歩み寄り始めている。米国は民主党と共和党が足並みを揃えて「一国二制度」の見直しに動こうとしている。米中貿易摩擦にファーウェイ問題、天安門30周年をどうにか乗り越えたと思ったら、後門で香港の反中国デモだ。貿易問題で権力基盤にひびが入りつつある習政権、前途はますます多難だ。それもこれも、国内を権力的に弾圧しながら拡大路線をひた走る習政権が自ら招いた危機だろう。習政権の歯車は少しずつ狂い始めてきた。