注目されていた日銀の短観がきのう発表された。結果は企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス7となり、前回の3月調査に比べて5ポイント低下した。低下幅は予想より小さいものの、2期連続の低下である。景況感が悪化していることは間違いない。大阪G20の合間に行われた米中首脳会談で通商協議の再開が決まった。これで先行きの懸念が多少緩和されたが、安倍総理が熱望する「年後半に向けた景気の回復」が約束されたわけではない。北朝鮮、イラン情勢、OPECプラスによる原油減産の継続など、先行きの不透明感は依然として残っている。それ以上に気になるのは、日本国内の消費マインドが一向に上向かないことだ。そんな中で10月に消費税が2%引き上げられる。そろそろ駆け込み需要が発生しても良さそうだが、それもない。水面下でデフレ意識が蠢き始めているのだ。
メディアの反応は意外に鈍い。19年度の大企業全産業の設備投資計画が前年度比7.4%増と底堅さが示されたことが要因だろう。おそらく、「思ったほど悪くない」との判断があるのではないか。短観の数字がもっと悪ければ今朝の新聞の一面は大々的に「消費増税見直しか?」といった見出しが踊っただろう。年後半にかけて景気回復に向かうという見通しも出ている。メディアは“増税止むなし”といった判断なのだろう。だが、個人的には「それでも消費増税は凍結すべきだ」と思う。消費税を引き上げれば、家計は一段と財布の紐を引き締める。世界経済にまとわりついている先行き懸念に加えて、国内では2000万円問題も影を落としている。家計の実質賃金も伸び悩んでいる。社会保障関係の負担増もある。家計を取り巻く不安感は一向に解消されていない。
こうした雰囲気に消費増税が拍車をかける。仮に景気が期待通りに年後半に回復したとしても、その時円相場は100円を割り込んでいるかもしれない。FRBはトランプ大統領の“口撃”を凌ぐべく、景気のピークアウトを防ぐために「予防的金融緩和」に踏み切ろうとしている。そうなれば円高進行でデフレ圧力がかかり、家計の買い控えは一段と加速する。景気の回復どころかデフレスパイラルの再現も懸念される。そうなれば消費増税の見返りに実施された景気対策など一気に吹き飛んでしまう。政府は新たな景気対策を打たざるを得なくなる。赤字国債の増発による公共事業の追加発注。消費増税で目指した財政の健全化どころか政府は、赤字財政のアクセルを踏みこまざるを得なくなる。消費増税の凍結による赤字国債の増発と結果は同じだが、景気が落ち込まない分だけ、こちらの方が財政健全化に寄与する。簡単な理屈だ。
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